偽閉経療法

偽閉経療法とは、GnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストを投与することによって、閉経前の女性のGnRHの働きを止めることによって、女性特有のホルモンの全体の動きを抑制して、閉経に近い状態にする治療です。

偽閉経療法は、子宮内膜症や子宮筋腫の薬物療法の中で、子宮内膜の増殖や子宮の筋肉を発達させる作用があるエストロゲンの分泌レベルを最も低下させるため、一番効果が高い治療法です。

偽閉経療法は、閉経が近い方、手術が近い方が一般的な適応になります。

GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン、Gonadotropin releasing hormone)は視床下部から分泌されて、下垂体から分泌されるLHとFSHの合成と分泌を促進させます。

GnRHアゴニストでは、GnRH類似体を投与することによってGnRH受容体をダウンレギュレートとして、その結果としてGnRHの作用を抑制します。効果発現には、GnRH受容体のダウンレギュレートに2〜3ヶ月罹ります。また、一時的に女性ホルモンが増えるために症状が悪化します。

GnRHアゴニストは、内因性 GnRH よりも高い生物学的活性を持っています。(2016, Supaman)

GnRHアンタゴニストでは、拮抗剤を投与することによって、即効的に女性ホルモンの動きを抑制して、一時的な症状悪化もありません。

2019年3月に発売されたレルミナ錠がGnRHアンタゴニストです。

現在は、偽閉経療法を行う際はGnRHアンタゴニストが主流になっています。

偽閉経療法は使う薬の種類に関わらず使用できるのは半年までと決まっています。

偽閉経療法では、低エストロゲンによって骨粗鬆症のリスクがあるからです。

連続で半年使用した後に、一旦中止してまた偽閉経療法を再開する、断続的に偽閉経療法を行う方法もあります。

GnRHアゴニスト誘発性の骨粗鬆症は可逆的であることが報告されています。(1989, Waibel-Treber)

GnRHアゴニストによる骨粗鬆症の副作用は、偽閉経療法よりも男性の前立腺がん治療で一般的に報告されています。エストロゲンは正常な男性の骨格の恒常性において中心的な役割を果たしており、GnRHアゴニストの骨格への悪影響の主な原因はテストステロン欠乏ではなくエストロゲン欠乏であると考えられます。クレームベースの研究では、GnRHアゴニストの治療を受けた前立腺がん男性の19.4%が骨折を起こしたのに対し、受けなかった前立腺がん患者では12.6%でした。(2006, Smith)

GnRHアンタゴニストも、GnRHアゴニストと同様に骨粗鬆症のリスクが指摘されています。(2021, Mohamad)

プロゲステロンが骨粗鬆症に対して保護的に働くことが指摘されています。(1991, Lee)(2018, Prior)

プロゲステロンは、エストロゲンによる成長に対抗する子宮内膜の重要なホルモンです。プロゲステロンが不足するとエストロゲン作用が抑制されなくなり、子宮内膜過形成や腺癌の発症につながる可能性があります。これらの子宮内膜腫瘍はプロゲスチン治療に反応して退縮する可能性があります。(2010, Kim)(2014, Kim)

子宮筋腫では、プロゲステロンは、増殖​​、細胞肥大、および細胞外マトリックスの沈着を増加させることによって成長を促進します。正常な乳腺組織および乳がんでは、プロゲステロンは増殖促進性であり、発がん性があります。(2014, Kim)(2012, Talaulikar)