のぼせと冷えのエキス剤の生薬分析
熱感と冷感を感じる症状は、「のぼせ」と「冷えのぼせ」と「冷え」の3つがあります。
■のぼせ(冷えなし)
一般的なのぼせを通り越して、体温が実際に上がり(実熱、炎症)、「冷え」が存在しないなら熱を冷ます黄連、黄芩、黄柏、黄耆、山梔子などの清熱薬が多く配合された漢方薬が効果的です。エキス剤は黄連解毒湯が代表です。
のぼせに加えて、怒りっぽい、イライラなどの精神症状を伴う肝火上炎に対しては、竜胆瀉肝湯を使います。
腎陰虚の場合は、腎陰が虚して陰虚火旺になります。また腎陰が肝陰を滋潤出来ず肝陽上亢となり、腎陰虚による足腰のだるさに加えて、のぼせ、頭痛、めまい、羞明などの症状を示します。桂枝加竜骨牡蛎湯を使います。
■冷えのぼせ
中医学から見た「冷えのぼせ」の原因は、瘀血と陰虚です。
瘀血とは血の流れが悪くなった状態です。瘀血では、刺すような持続的な痛み、夜間に痛みが増強、口唇指爪顔が暗紫色になることが特徴です。
瘀血対しては、血の巡りを改善する活血化瘀薬(桃仁、川芎、牡丹皮など)が用います。
「気行(みち)ればすなわち血行(みち)る」で活血化瘀薬には、気の巡りの悪い状態の気滞を治す柴胡、厚朴、半夏などの行気薬(理気薬)を併用します。
陰液とは、津液(人体内の正常な水分の総称で、血液・体液・分泌液)に精(気血津液と並んで人間にとって根源的な物質であり、人間の生殖・発育・老化に関わっている)を加えたものです。陰陽論から、陽の力を発揮するものを陽気と呼び、陰の力を発揮するものが陰液と呼びます。陰虚とは、陰液の不足で生じた状態のことです。陰虚では、痩せ型、口咽が乾く、寝汗、手足のほてり、目がかすむ、動悸、不眠、キーンという耳鳴り、腰が重だるく下肢の脱力が見られます。身体を冷やす働きを持っている陰液が不足することにより、身体を温める作用を持つ陽気を抑制できず熱化が起こって「のぼせ」が生じます。
陰虚は血と津液が不足した状態でしたので、それぞれを補う漢方薬を用います。血を補う地黄、芍薬、当帰などの補血薬や麦門冬、地黄、人参といった滋陰薬を豊富に含んだ漢方薬が検討されます。
冷えのぼせには、一般的には温経湯、桂枝茯苓丸、五積散を使います。行気薬の厚朴と陳皮を含む五積散は、気滞によるうつなどがある場合に使います。
疎肝作用のある柴胡を含む加味逍遙散は、冷えのぼせに加えて精神不安などの精神症状がある場合に使います。
ただし、柴胡は単純な肝気鬱結に使います。昇発の作用を持つので、肝火、肝陽上亢には使いません。
利水滲湿作用を持つ沢瀉などを含む当帰芍薬散は、冷えのぼせに加えて、水毒の症状の足腰のだるさ、むくみなどがある場合に使います。
■冷え(のぼせなし)
冷え症+腹痛に当帰四逆加呉茱萸生姜湯、冷え症+頭痛に呉茱萸湯を使います。
虚証の四肢の冷え+瘀血には十全大補湯、虚証の四肢の冷え+うつには人参栄養湯を使います。