肢端紅痛症
肢端紅痛症(erythromelalgia)は、通常は下肢または手の血管が一時的に閉塞し、その後充血して炎症を起こす、まれな血管末梢痛疾患です。四肢末梢の紅潮、皮膚温の上昇、灼熱痛を三兆とします。1878 年にサイラス ウィアー ミッチェルによって記載され、長い間ミッチェル病として知られていました。これまで、種々の診断法、治療法が試みられてきたが、未だ確定診断基準 や有用な治療法が確立されていません。原発性肢端紅痛症自体は稀な症候群とされるものの、多血症、血小板増多症、ニューロパチー、自己免疫疾患など多くの疾患に伴って二次性のものが現れます。 特に、骨髄増殖性疾患の初期症状として有名です。多くの症例では足あるいは手の著明な紅潮が出現した際 に灼熱痛を伴う痛みが周期的に増強および減弱し、患肢を冷水に浸すことにより緩解、暖めることで増悪するため,疼痛除去 を主体に診療されることが少なくありません。一方、症状が完治する症例は少なく、頑性痛、持続痛に移行した症例は 治療に苦慮します。(2003, 坂本)
2004 年に肢端紅痛症は、SCN9A 遺伝子との関連性が初めて発表され、ナトリウムイオンチャネルの変異と慢性神経因性疼痛の関連付けが可能となった最初のヒト疾患となりました。原発性肢端紅痛症は家族性または散発性のいずれかに分類され、家族性の型は常染色体優性遺伝します。(2005, Waxman)
肢端紅痛症に関して、SCN9A 遺伝子との関連性が初めて発表されて以来、20を超える遺伝子異常が報告されて総括されています。(2015, Tang)
新型コロナmRNAワクチン接種後に肢端紅痛症を発症した症例(軽度の発赤)が報告されています。(2021, Al-Ansari)
新型コロナワクチン接種後に、肢端紅痛症を発症した症例が総括されています。ある大規模な登録ベースの研究では、414 人の患者のうち 14 人で肢端紅痛症が報告されました (年齢中央値は 38 歳 (範囲 19 ~ 83) )。病変は通常、初回投与後平均 7 日以内に発生し、追加免疫後はそれより早く発生します。一般的に報告されている関与部位は、腕 (69%)、顔 (31%)、手 (23%)、足 (15%) です。(2021, Bellinato)
肢端紅痛症の発作中のメカニズムとしては、微小動静脈シャントが想定されています。(2018, Leroux)
高用量のマグネシウムの経口投与が、肢端紅痛症に有効であったことが報告されています。(2002, Cohen)
トリプトファンを大量に含むサプリの摂取によって肢端紅痛症が発症した症例が報告されています。(2018, Michelelio)
カルシウム拮抗剤のニカルジピンによって肢端紅痛症が発症した症例が報告されています。(1989, Levesque)
血管を拡張させるカルシウム拮抗薬による治療法も報告されています。(2018, Tamm)
キノコ中毒によって肢端紅痛症を発症した症例が報告されています。(2021, Mizusawa)
肢端紅痛症に対して八味地黄丸の有効例が報告されています。(2010, Inoue)
ワクチン後遺症における肢端紅痛症は、スパイクタンパク質が湿邪として痰熱侵淫となり起こります。治法は、加味二妙散に清熱生津のための薏苡仁(利水、清熱)・山薬・沙参(滋陰)・天花粉(清熱瀉火)・麦門冬を加えます。(実用中医内科学)
加味二妙散:当帰、防已、萆薢(ひかい)、蒼朮、黄柏、午膝、亀板(各10)