頭痛の中医学的治法

■要点

1.外寒によるものは急性発症、内傷によるものは慢性で反復します。

2.内傷頭痛では、気虚では脈が大、血虚では孔脈、腎虚では腰膝酸軟、肝陽上亢では筋が緊張して、四肢は麻痺し、痰濁では眩暈し、悪心する。瘀血では、刺痛あり。

(孔脈とは、軽取では大で、中取と沈取では無で、ネギの管を押さえるような感じがする脈です。)

ワクチン後遺症や新型コロナ後遺症によって頭痛やめまいが起こることが知られています。これは、中医学では「肝陽頭痛」、「痰濁頭痛」、「瘀血頭痛」に当たります。

外寒頭痛
風寒頭痛悪風(風に当たると悪寒)川芎茶調散化裁
風熱頭痛発熱芎芷石膏湯化裁
風湿頭痛四肢がだるく重い羌活勝湿湯化裁
内傷頭痛
肝陽頭痛頭痛+眩暈(眼の前が暗くなる目眩)、イライラ、怒りっぽい、筋肉のピクつき、両側が重い、脇痛、顔が紅く舌も紅い天麻釣藤飲
+肝陰不足(肝陽が有余して、肝陽上亢の上記症状が甚だしい)加 白芍、女貞子、石斛(せっこく、滋陰)
+頭痛が強烈、口が苦い、目が赤く、小便が黄色梔子(しし)清肝散
+腎陰虧虚(腎陰が不足で腎陽は興奮して、腰膝酸軟、頭暈耳鳴、口乾咽痛、両頬潮紅、五心煩熱、午後潮熱、舌紅無苔、脈細弦)杞菊(こぎく)地黄丸
気虚頭痛だるくて力が出ない、小声、息切れ、顔舌が白い順気和中湯化裁
血虚頭痛眩暈、顔舌が白い、動悸加味四物湯
腎虚頭痛眩暈、耳鳴、腰膝酸軟大補元煎化裁
痰濁頭痛頭痛+昏蒙(意識混濁)、胸脘痞悶(きょうかんひもん、胸がつかえ悶え苦しむ)、納呆で悪心あり、白膩苔(写真)半夏白朮天麻湯
胸脘痞悶、納呆加 厚朴、枳穀(きこく、行気)
+痰熱、口が苦い、舌苔が黄濁、便秘去 白朮 加 黄連、枳穀、竹筎
瘀血頭痛固定した頭痛、刺痛、舌に瘀班、脈は細、渋通竅(つうきょう)活血湯
+頭痛が強烈全蠍、蜈蜙(ごしょう、平肝熄風)、五霊脂、地竜
+寒邪を兼ねる場合加 桂枝、細辛

納呆とは、胃の収納機能が停滞することで、食欲不振や消化不良のこと。

川芎茶調散化裁:薄荷、香附子、川芎、荊芥、防風、白芷、羌活、甘草

芎芷石膏湯化裁:川芎、白芷、石膏、菊花、藁本(こうほん、辛温解表)、羌活

羌活勝湿湯化裁:羌活、独活、炙甘草、藁本、川芎、防風、蔓荊子

天麻釣藤飲:天麻5、釣藤鈎12(後下)、山梔子6、黄芩6、牛膝7、杜仲7、益母草9、石決明18(先煎)、桑寄生9、夜交藤9、朱茯神9

梔子清肝散:柴胡、山梔子、牡丹皮、茯苓、川芎、芍薬、当帰、牛蒡子(ごぼうし、辛涼解表)、甘草

杞菊地黄丸:枸杞子、菊花、熟地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、牡丹皮、茯苓

順気和中湯化裁:黄耆、人参、白朮、陳皮、当帰、芍薬、炙甘草、升麻、柴胡、蔓荊子(まんけいし、辛涼解表)川烏頭、細辛

加味四物湯:生地黄、当帰、白芍、蔓荊子、川芎、黄芩、菊花、甘草

大補元煎化裁:人参、山薬、杜仲、熟地黄、当帰、枸杞子、山茱萸、炙甘草

半夏白朮天麻湯:半夏9、天麻3、茯苓3、陳皮3、白朮9、灸甘草1.5、生姜3、大棗3

通竅活血湯:赤芍、川芎、桃仁、紅花、生姜、老忽(ろうくつ)、紅棗(ほんざお、なつめ)、竅香、黄酒