天王補心丸

天王補心丸は、天王補心丹とも言い、中国元の時代に著された「世医得効方」に記載されている天王補心丹が基の処方です。

滋陰養血の地黄、当帰、麦門冬、天門冬、党参と、養心安神の遠志、桔梗、酸棗仁、柏子仁、茯苓、丹参が主成分です。

「世医得効方」の天王補心丹はこれに五味子、玄参が入っていますが、天王補心丸には、五味子、玄参は入っていません。

成分を粉にして丸めるために蜂蜜、滑石、ミツロウを用いています。


天王補心丹は、滋養安神剤に分類され、焦燥、不安、不眠、動悸、易醒、多夢、盗汗、健忘、舌質が紅絳・少苔の時に用います。

不眠症、自律神経失調症、神経衰弱、発作性頻脈、心臓神経症、健忘症、口内炎、甲状腺機能亢進症、高血圧により心と腎が弱っている人に効果があります。

心陰虚(動悸、不眠、多夢、健忘に加えて、虚熱症状として盗汗、口咽が乾く、五心煩熱)に用いますが、心火(心の陽気が亢進した状態のことです。心陰虚に加えて興奮、多弁となります。)がある際は、天王補心丸に黄連、珍珠母を加えます。

五心煩熱(ごしんはんねつ)とは、「五心」とは手掌、足底と心胸部を指し、そこに熱感を感じ、同時に心煩(胸がもやもやして落ち着かない)して落ち着かない感じの症状を伴うこと。陰虚のときに見られる症状です。