スパイクタンパク質抗体価とNタンパク質抗体価
まとめ:スパイクタンパク質抗体価とNタンパク質抗体価は、直接現在のスパイクタンパク質とNタンパク質を見るものではなく、過去のスパイクタンパク質とNタンパク質の存在を間接的に反映しているに過ぎません。
スパイクタンパク質抗体価と中和抗体価は相関はしますが、完全には一致しません。
Nタンパク質抗体価は過去の新型コロナ感染を反映します。
ワクチン接種回数が増えると共に、スパイクタンパク質抗体価のピークは高くなります。
同じ接種回数でも、スパイクタンパク質抗体価は100倍(2桁)の個人差がある。
理論的にはスパイクタンパク質抗体価(IgG)の半減期は約23日なので、6ヶ月で250分の1になる(10000であっても、6ヶ月で40(基準値50以下))はずであるが、実際の減衰はもっと緩やかである。
どの報告でも、全体としてワクチン接種後の抗体価はゆるやかに減衰していきます。
■順天堂大学のレポート
■村山医療センターのレポート(抗スパイク蛋白抗体価および中和抗体価を測定 -コロナワクチン調査レポート6-)
医療従事者219名を対象にしたコロナワクチン1回目から3回目の抗スパイク蛋白抗体価および中和抗体価を測定の測定結果です。
中和抗体価とは、ウイルスによる細胞障害(CPE:細胞変性効果)を実際に阻止できる強さを示します。採取した血清から様々な希釈倍率の検体を作成し、細胞障害を阻止できる最も大きい血清の希釈倍率を中和抗体価とします。即ち、中和抗体価が「40倍」という場合は、血清を40倍希釈したものでもウイルスによる細胞障害を阻止する能力を有していたという意味になります。
■順天堂大学の報告
これまで新型コロナウイルスに対する中和抗体とS抗体は一致すると報告されてきました(2021, Fujigaki)が、新型コロナウイルス感染症の重症症例では、中和抗体の活性化がS抗体の産生よりも遅れて起こることを報告し、血清学的検査によって測定された抗体レベルと本物のウイルス中和アッセイによって検出された中和活性との間に不一致がある可能性があることを示しています。(2022, Takahashi)
■東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科の報告
東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科の職員20名を対象とした新型コロナワクチン接種前後の抗S抗体価の推移が報告されています。N抗体価はすべての血清で陰性でした。
■東京大学医科研究所(2021, Yamayoshi)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しCOVID-19を発症した患者39名におけるウイルスに対する抗体応答の解析を行い、ウイルス感染により誘導された抗体が、発症後少なくとも3~6か月間維持されることを明らかにしました。誘導された抗体は、発症20日目をピークとして、徐々に低下していました。しかし、その低下速度は発症から時間が経つと緩やかになり、抗体が長期間にわたり持続されることが確認されました。
ワクチン4回接種3-4ヶ月後のS1-IgG抗体価及び中和抗体価は、3回接種4ヶ月後と比較して 有意に上昇していました。ワクチン4回接種後抗体価は接種3ヶ月後まではほぼ横ばい、その後高い値ではあるものの早 くに減衰するが、5回目のワクチン接種により4回目接種1-3ヶ月後と同等の値まで増加が認められました。