不正出血の中医治療
不正出血(不正性器出血)とは、月経・分娩などの正常な時期以外で起こる女性器からの出血の総称で、時期の問題です。
中医学で不正出血は、経間期出血(月経と月経の間に現れる出血)、崩漏(ほうろう、月経期間でない時期の持続的な出血)、月経先後不定期(月経周期が不定期で早くなったり遅くなったりする)に当たります。
その他には、月経過多(月経周期は変わらないが経血量が増えたもの、量の問題)、帯下過多(経血量が増え、且つ色・質・臭いの異常がある、量に加え質の問題)があります。
■経間期出血、腎陰虚が一般的に多い。
経血 | |||
腎陰虚 | 量少ないまたはやや多い、鮮紅、粘調、血塊なし、腰酸、頭暈、熟眠出来ない | 滋陰養陰、固衝止血 | 両地湯、二至丸(にしがん) |
湿熱 | 量多い、赤白、粘調 | 清利湿熱、固衝止血 | 清肝止淋湯 |
血瘀 | 量少ない、紅赤、血塊あり | 化瘀止血 | 逐瘀止血湯 |
両地湯:生地黄、地骨皮、麦門冬、白芍、阿膠(あきょう、養血・止血・滋陰)、玄参
二至丸:女貞子、旱蓮草(かんれんそう、滋陰)
清肝止淋湯:白芍、当帰、生地黄、阿膠、牡丹皮、黄柏、牛膝、香附子、紅棗(こうそう、大棗、補気)、小黒豆(黒豆、滋陰)
逐瘀止血湯:生地黄、亀板、大黄、赤芍、牡丹皮、当帰、枳穀、桃仁
■崩漏(大量の不正出血のことで、急性で大量のものを「崩」、慢性で少量のものを「漏」と言います)
脾虚 | 納呆、下痢、疲労、息切れ、顔・四肢の浮腫 | 補気摂血、固衝止崩 | 固本止崩湯(こほんしほうとう) | |
腎虚 | 腎気虚 | 顔色暗い、下痢、小声、疲労、夜尿多 | 補腎益血、固衝止血 | 加減蓯蓉菟絲子丸 |
腎陽虚 | 四肢の冷え、腰膝酸軟 | 温腎益気、固衝止血 | 右帰丸 | |
腎陰虚 | 頭暈、耳鳴り、腰膝酸軟、五心煩熱 | 滋陰益陰、固衝止血 | 左帰丸 合 二至丸、滋陰固気湯 | |
血熱 | 虚熱 | 陰虚体質、口乾、五心煩熱、不眠、便秘 | 養陰清熱、固衝止血 | 上下相資湯 |
実熱 | 陽盛体質+肝火、口乾、煩熱(発熱+ソワソワ)、便秘 | 清熱涼血、固衝止血 | 清熱固経湯 | |
血瘀 | 血塊、舌に瘀班、瘀点 | 活血化瘀、固衝止血 | 逐瘀止血湯 |
固本止崩湯:熟地黄、白朮、当帰、黄耆、人参、黒姜(こくきょう、散寒、高良姜)
加減蓯蓉菟絲子丸:熟地黄、肉蓯蓉(助陽)、覆盆子(ふくぼんし、収渋)、菟絲子(助陽)、当帰、枸杞子、桑寄生、艾葉(がいよう、散寒)
右帰丸:熟地黄、山薬、枸杞子、山茱萸、菟絲子、鹿角膠、杜仲、当帰、肉桂、附子
左帰丸:熟地黄、山薬、枸杞子、山茱萸、菟絲子(としし、助陽)、鹿角膠(ろっかくきょう、助陽)、亀板膠(きばんきょう、滋陰)、牛膝
二至丸:女貞子、旱蓮草(かんれんそう、滋陰)
滋陰固気湯:山茱萸、菟絲子、党参、黄耆、白朮、炙甘草、阿膠、鹿角膠(助陽)、何首烏、白芍、続断(助陽)
上下相資湯:熟地黄、麦門冬、山茱萸、玉竹、沙参、当帰、牛膝、車前子、五味子、人参、玄参
清熱固経湯:亀板、牡蛎、阿膠、生地黄、地骨皮、地楡(ちゆ、止血)、藕節(ぐうせつ、止血)、山梔子、黄芩、陳棕櫚(ちんしゅろ、止血)、生甘草
逐瘀止血湯:生地黄、亀板、大黄、赤芍、牡丹皮、当帰、枳穀(枳実)、桃仁