肺炎(風温、温病)の中医治療、衛気営血弁証
中医学の風温は、西洋医学では肺炎や急性気管支炎やインフルエンザに当たります。
感冒と風温の違いについては、風温では伝変して長期化・重症化しますが、感冒とはほとんど伝変せずに1週間以内に寛解します。
衛気営血という病機の伝変をもとにして、5つの弁証に大別されます。
衛気営血弁証は、葉天士が確立した主に外感温熱病に応用される弁証方法です。温熱病の伝変の過程は、4段階になっています。温熱病の病邪は、衛より気に入り、気より営に入り、営より血に入ることにより、一歩一歩病状が進行します。その病変部位は、衛分証は表に有り、病位は肺と皮毛。気分証は裏に有り、病位は胸膈、肺、胃、腸、胆などの臓腑。営分証は邪熱が心営に入り、病位は心と心包。血分証は、熱が肝腎に入り、容易に血を耗傷します。
衛分証 | 熱邪が表(皮膚) | |
発熱、微悪寒、口微渇、咳嗽、頭痛 | 銀翹散 | |
発熱が高い | 加 鴨跖草 | |
頭痛が強い | 加 菊花 | |
項背強 | 加 葛根 | |
咽頭脹痛 | 加 土牛膝、蒲公英 | |
喀痰粘調 | 加 黄芩、知母、貝母 | |
気分証 | 熱邪が裏(衛気) | |
熱壅(よう)肺気 | 高熱、口渇、咳嗽、痰黄色で時に帯血、胸悶・胸痛 | 麻杏甘石湯 |
高熱、喀痰が激しい、適宜加減する | 加 黄芩、知母、魚腥草、金銀花、金蕎麦 | |
胸痛が激しい | 加 桃仁、鬱金 | |
喀血 | 加 茜草根、芋根、側柏炭 | |
痰熱壅盛、肺気不通、腑気不通 | 宣白承気湯 | |
熱壅胸膈 | 身熱、口渇、心中懊(おう)悩(心下部の灼熱不快感) | 梔子鼓湯 |
適宜加減する | 加 黄芩、貝母、栝楼仁、黄芩、枇杷葉 | |
邪熱が盛ん | 涼膈散 | |
熱入陽明 | 高熱、口渇、大量の発汗、うわごと、大便秘結または便溏、肛門に灼熱感 | 白虎湯 |
熱毒が盛ん | 加 金銀花、連翹、板藍根、大青葉 | |
裏熱が火と化す | 加 黄連、黄芩 | |
津傷が顕著 | 加 石斛(せっこく)、天花粉(栝楼根)、蘆根 | |
営分証 | 熱邪が裏(営分)、熱+脱水症状 | |
熱入心営 | 潮熱、口渇あるが飲みたがらず、心煩不眠、うわごと、 | 清営湯 |
熱閉心包 | 高熱、うわごと、昏睡 | 清営湯 |
血分証 | 熱邪が裏(脈)、陰液の消耗激しく、出血症状も出現 | |
熱盛動血 | 全身の班疹、皮下出血、吐血、喀血、便血、尿血 | 犀角地黄湯 |
痰熱互結 | 少腹硬満急痛 | 桃仁承気湯 |
陰傷気脱証 | ||
肺胃陰傷 | 熱は下がって微熱、乾咳少痰、口渇 | 沙参麦門冬湯 |
肝腎陰傷 | 難聴 | 加減復脈湯 |
正気外脱 | 熱が急に下る、発汗止まらず、顔面蒼白、呼吸急促 | 生脈湯 |
銀翹散:金銀花30、連翹30、桔梗18、薄荷18(はっか、辛涼解表)、竹葉12(清熱瀉火)、荊芥穂12(すい)、豆豉15、生甘草15
麻杏甘石湯:麻黄6、杏仁9(止咳平喘)、炙甘草6、石膏18
宣白承気湯:杏仁、瓜蓑皮(栝楼仁)、石膏、大黄
梔子鼓湯:山梔子、豆鼓(香鼓こうし)
涼膈散:連翹、薄荷、竹葉、山梔子、黄芩、大黄、芒硝、甘草
白虎湯:知母、糠米、石膏、甘草
清営湯:犀角、黄連、生地黄、玄参、麦門冬、丹参、金銀花、連翹、竹葉
犀角地黄湯:犀角、生地黄、牡丹皮、芍薬
桃仁承気湯:桃仁、当帰、芍薬、牡丹皮、大黄、芒硝
沙参麦門冬湯:沙参、麦門冬、玉竹、天花粉、桑葉、白扁豆、甘草
加減復脈湯:地黄、阿膠、麦門冬、白芍、炙甘草、麻子仁(ましにん、瀉下)
生脈湯:人参、麦門冬、五味子