間質性肺炎(肺痿)の中医治療

間質性肺炎は、中医学では肺痿(はいい)と呼ばれます。

間質性肺炎は「間質」と呼ばれる肺胞の壁に炎症や損傷が起こる病気です。 肺胞の壁が厚く硬くなるため(線維化といいます)、酸素を取り込みにくくなります。このために主症状は、「労作時の呼吸困難と長引く無痰の乾咳」で、進行すると呼吸不全となります。平均寿命は3〜5年です。特発性が50%ですが、自己免疫疾患(約10%)、マイコプラズマ感染、新型コロナ感染、アスベスト、薬剤など様々な原因で発症します。ほとんどの症例で喫煙が関係しており、治療は禁煙が原則です。レントゲンでは全体がすりガラス状に見えます。間質性肺炎による炎症が長期間続くと、肺の間質が瘢痕化(線維化)し、肺線維症を引き起こします。抗線維化薬の効果は、数か月から1年程度の延命効果が期待できるとされています。これまでは、ステロイド治療や旧来の抗線維化薬は効果が不十分であり(2003, White)、新薬の治療が期待されています。

■弁証の要点

1.寒熱を弁ず。虚熱の肺痿では、陰液が不足して虚熱が内生して陰虚内熱となります。虚寒の肺痿では、陽気が傷耗して肺中が虚冷して気傷虚冷となります。

2.兼証を弁ず。肺痿の病位は肺にあるが、肺陰が不足すると腎陰も不足して、潮熱、盗汗、手足心熱、腰膝酸軟となります。肺気が不足すれば脾気も虚損して、乏力、納少、腹腫、便溏となります。

間質性肺炎は全体として本虚標実(根本は虚、症状としては実)、そして虚実夾雑(虚と実が入り混じる)を特徴とする。肺・腎の両臓の虚を本とし、痰濁や瘀血が互いに結びついて肺絡を阻滞することを標とする。発病初期は邪気の侵襲によるため標実が主体であり、痰濁・瘀血が互いに錯綜して病を形成する。この時期の本虚は主として肺にあり、主に肺気・肺陰の不足として現れる。後期になると肺・脾・腎の三臓がともに虚し、正気が衰弱するため、本虚が主体となる。しかし同時に痰濁や瘀血などの標実の症候も併存し、虚実がともに存在する状態となる。さらに進行すると、邪実と正虚はいずれも極端な状態となり、病勢は重篤化へ向かう。(周忠英、弁証論治肺系病臨床経験)

間質性肺疾患の中医学病名はなぜ「肺痹」「肺痿」に分かれるのか。間質性肺疾患は、一つの中医学病名のみで表現することが難しい。「肺痹」と「肺痿」の二者は互いに矛盾しない。肺痹は、肺が邪によって痹され、痹阻して通じず、気血が流暢さを失うことをいうものであり、邪実の面から論じたものである。肺痿は、肺の萎弱して機能しないことをいうものであり、本虚の面から論じたものである。それらはこの類の疾病の異なる段階における特徴を代表している。疾病早期には、しばしば外感六淫によって誘発され、肺絡痹阻の病理表現を主とするので、肺痹に属する。疾病晩期には、肺線維化が長く治らず、病機の変化は気および血から、肺および腎に及び、肺腎両虚、気血不足、絡虚不栄となる。そして肺気は虚弱となり、津血は不足し、濡養を失う。これが肺痿の基本病機の特徴である。したがって間質性肺疾患の晩期は、肺痿を主とすべきである。疾病の慢性遷延期には、肺痹と肺痿の相互転化が存在する。ただし痹と痿の偏重が異なるだけである。

間質性肺疾患の中医学的病因病機とは何か本病の病位は肺にある。しかし脾・腎と密接に関係し、後期には心にも及ぶ。病因は正虚を本とし、邪犯を標とする。病性は本虚標実に属する。病理因子は主として痰濁・瘀血である。病初には肺体が虚損しているため、外邪を感受し、津液を耗傷する。津は集まって痰となり、痰濁は肺を蘊する。病が長くなり勢いが深くなると、肺気は鬱滞し、血行は不暢となり、肺絡は痹阻する。また気虚による推動無力によって瘀血が生じ、痰瘀互結の証を形成することもある。外感によって誘発された時は邪実に偏る。平素は本虚に偏る。疾病初期には、素体が虚し、外邪が肺を犯し、気を耗し津を傷るので、邪実・本虚である。中期には病が脾に及び、痰瘀痹阻があり、多くは虚実夾雑に属する。後期には病が腎・心に及び、気虚および陽虚、あるいは陰陽両虚となり、しだいに危候となる。本病の基本病機は、「虚・痰・瘀」であり、しかも痰瘀痹阻・肺絡が終始これを貫いている。(龙华中医谈肺病)

虚熱には、滋陰の麦門冬、生地黄、熟地黄、百合、天門冬、化痰の貝母、半夏、清熱の竹葉、石膏、黄連、黄芩、牡丹皮、排熱の沢瀉、茯苓を使います。

虚熱粘調の濁唾涎沫(せんまつ)を咳吐し、喀出が困難、粘い糸を引く、喀血、咽乾、口渇、冷飲を好む竹葉石膏湯加減竹葉石膏湯:竹葉(清熱瀉火)、石膏、麦門冬、半夏、人参、炙甘草、糠米(ぬかごめ)
+心陰不足心悸、健忘、不眠、易驚、多夢合 黄連阿膠湯黄連阿膠湯:黄連、黄芩、白芍、鶏子黄(けいしおう)、阿膠(補血)
+腎陰不足潮熱盗汗、手足心熱、腰膝酸軟百合固金湯百合固金湯:生地黄、熟地黄、百合(びゃくごう、滋陰)、麦門冬、貝母、当帰、白芍、甘草、玄参、桔梗
月華丸月華丸:天門冬、麦門冬、生地黄、熟地黄、山薬、桃仁、赤麹、沙参、貝母、阿膠、茯苓、獺肝(だつかん)、三七(さんしち)
麦味地黄湯麦味地黄湯:生地黄、山茱萸、山薬、茯苓、牡丹皮、沢瀉、五味子、麦門冬
金水六君煎金水六君煎:当帰、茯苓、半夏、熟地黄、陳皮、炙甘草、生姜
拯陰理労湯拯(じょう)陰理労湯:牡丹皮、当帰、麦門冬、橘紅(きっこう)、炙甘草、薏苡仁、蓮子(れんし、収渋)、白芍、五味子、人参、生地黄、大棗
虚寒希薄な涎沫を咳吐し、量が多い、口渇なく、冷え症、甘草乾姜湯加減甘草乾姜湯:炙甘草、乾姜
咳唾涎沫が止まず、咽燥、口渇生姜甘草湯加減生姜甘草湯:生姜、甘草、人参、大棗
+脾気虚弱乏力、納少、腹腫、便溏補中益気湯補中益気湯:黄耆、白朮、甘草、人参、升麻、柴胡、陳皮、当帰
保元湯保元湯:人参、黄耆、甘草、官桂(肉桂)、生姜
六君子湯六君子湯:白朮、茯苓、人参、半夏、陳皮、大棗、生姜、甘草
+腎陽不足腰腿無力、咳すれば遺溺(尿もれ)、心悸気喘拯陽理労湯拯陽理労湯:黄耆、人参、肉桂、当帰、陳皮、白朮、甘草、五味子、生姜、大棗
寒熱挟雑虚熱と虚寒は同時に出現することがある。麻黄升麻湯加減麻黄升麻湯:麻黄、升麻、当帰、知母、黄芩、葳蕤(いすい、玉竹、滋陰)、芍薬、天門冬、桂枝、茯苓、炙甘草、石膏、白朮、乾姜

日本でのみの報告であるが小柴胡湯などのエキス剤漢方薬による薬剤性間質性肺炎の報告があり、エキス剤漢方薬に含まれる原因となる生薬として黄芩が挙げられています。(2002, 寺田)

また、黄芩と柴胡は肝障害の報告もあります。(2019, Wuweizi)