厥証の中医治療
厥証(けつしょう)は、突然倒れる・意識不明・四肢厥冷などの症状を呈するものです。西洋医学では、失神、ショック、熱射病、低血糖性昏睡などのことです。後遺症を残さない一過性の意識障害のことです。
■要点
1.病因を弁ず。厥証では必ず病因があるので、病歴をよく把握することが大事である。
2.虚実を弁ず。
実証の厥証 | 虚証の厥証 |
荒々しく呼吸 | 弱々しく呼吸 |
口を堅く閉じる | 口を開ける |
自汗あり、皮膚四肢冷たい | |
脈は沈実か沈伏 | 脈は沈細微 |
気厥 | ||
実証 | 精神的刺激で発症、顔面蒼白、荒々しく呼吸、口を堅く閉じる、肝気鬱結の上逆 | 蘇合香丸、玉枢(すう)丹 |
虚証 | 疲労・寝不足などで発症、めまいして倒れる、弱々しく呼吸、自汗、元気の虚 | 参附湯、耆(き)附湯 |
血厥 | ||
実証 | 暴怒で発症、顔面赤、口を堅く閉じる、上逆して血が上る | 通瘀煎 |
虚証 | 出血・大汗・嘔吐の後に発症、顔面蒼白、弱々しく呼吸、自汗 | 蘇生後に全真益気湯去牛膝加黄耆 |
痰厥 | 喉に痰声、涎を嘔吐、荒々しく呼吸、舌苔白膩 | 導痰湯加減 |
食厥 | 暴飲暴食 | 神朮散 合 保和丸加減 |
暑厥 | 暑邪 | 白虎加人参湯、清暑益気湯 |
中悪 | 特殊な環境(不潔など) | 藿香正気散 |
酒厥 | 酒の不摂生 | 葛花解醒湯 |
性厥 | 性交時 | 独参湯 |
蘇合香丸:白朮、木香、犀角、香附子、朱砂、訶子(かし、収渋)、檀香(だんこう、行気)、安息香(あんそくこう、開竅)、沈香(じんこう、行気)、藿香、丁香(ちょうこう、散寒)、萆薢(利水)、竜脳(開竅)、陸香(ろくこう、理血)、蘇合香(そごうこう、開竅)
玉枢(すう)丹:山慈姑(さんじこ)、五倍子(ごばいし、収渋)、千金子、紅芽、大戟(たいげき、瀉下)
参附湯:人参、附子
耆(き)附湯:黄耆、附子
通瘀煎:当帰、山梔子、香附子、紅花、烏薬(うやく、行気)、青皮、沢瀉、木香(行気)
全真益気湯:熟地黄、麦門冬、白朮、牛膝、五味子、附子、人参
導痰湯:半夏、陳皮、枳実、甘草、天南星
神朮散:蒼朮、陳皮、厚朴、炙甘草、藿香、縮砂
保和丸:山梔子、呉茱萸、生姜、肉桂、人参、甘草
白虎加人参湯:知母12、石膏30、灸甘草6、粳米(養胃)15〜30、人参6
清暑益気湯:黄耆、蒼朮、升麻、人参、沢瀉、神麹、橘皮、白朮、麦門冬、当帰、炙甘草、青皮、黄柏、葛根、五味子
藿香正気散:大腹皮、白朮、半夏、茯苓、厚朴、陳皮、桔梗、白芷(びゃくし)、蘇葉(そよう、辛温解表、紫蘇)、藿香、大棗、生姜、甘草
葛花解醒湯:木香、橘皮、人参、猪苓、茯苓、乾姜、白朮、青皮、白豆蔲、縮砂、葛花
独参湯:人参