キトサン
まとめ:キトサンは小腸で脂質と結合することによって、脂質の吸収を阻害して体外に排出します。血中の脂質の低下および食物繊維として便秘に有効です。一方で、脂溶性ビタミンも一緒に排泄させてしまう点が懸念されます。甲殻類アレルギーのある人には推奨できません。
キトサンは、油物を食べすぎた時の体重増加を防ぐ目的で一般的には使われているようです。(アマゾンサプリ)作用メカニズムから考えると、確かにこの効果が期待できます。
キトサンとはキチンを分解したものです。「キチン」は、カニやエビなどの甲殻類の殻やキノコや酵母などの菌類の細胞壁に含まれる堅くて強度のある成分です。キチンは、長い糸状のポリマー(大きな分子)として存在しています。
六角形の「アセチル基(NHCOCH3)」が安定していて、他の物質と作用しません。これらの鎖状のポリマーはアセチル基と呼ばれる部分が結合していますが、アルカリ処理(石鹸で洗うようなイメージ)を行うことで、アセチル基が取り除かれ、小さい分子へと分解する事が出来ます。そこでキチンを脱アセチル化すると、アセチル基が「アミノ基(NH2)」に変わった新しい物質が生まれます。
このアセチル基が取り除かれた状態の物質を「キトサン」といいます。
キトサンは、体内の消化酵素では「分解する事が出来ない食物繊維」の一種です。キトサンを摂取する事で、キトサンと脂質が結合した形となり小腸から脂質を吸収する事が出来にくくなる為、血液中のコレステロールやトリグリセリドの上昇を抑制する可能性が考えられます。(2011, Wang)
肥満の成人の減量に対するキトサンの有効性を評価した結果、有意な体重減少は認められませんでした。(2004, Mhurchu)
キチンキトサンを食品サプリメントとして摂取すると、食事中の脂質と結合して腸管脂質の吸収が抑えられるため、血漿コレステロールとトリグリセリドが減少する有益な効果があります。キトサンの脂質低下作用は、腸肝胆汁酸循環の遮断によるものと考えられます。しかし、コレステロールを含まない食事を摂っている動物の血漿コレステロールは影響を受けず、コレステロールの内因性生合成は損なわれていないことを示しています。キトサンは、腸管内でゲルを形成し、脂質や脂溶性ビタミンやミネラルなどの栄養素を閉じ込めて吸収を妨げます。食事中のキトサンは、カルシウムの尿中排泄を促進することでカルシウム代謝に影響を与える可能性があります。報告されている望ましくない効果は、血漿ビタミン E レベルの著しい低下、骨ミネラル含有量の減少、成長遅延です。アスコルビン酸はキトサンのゲル形成を促進し、血漿コレステロール低下作用を強化します。キトサンは脂質の乳化と吸収を阻害するため、盲腸内の胆汁酸組成と短鎖脂肪酸含有量が変化します。便の脂質含有量の増加は胃腸機能に変化を及ぼさないようですが、軽度の脂肪便の症状を悪化させる可能性があります。キチンキトサンは、試験管内でカンジダなどの微生物の増殖を抑制し、生体内ではカンジダ感染に対する保護効果があります。キトサンの抗菌作用と抗酵母作用は望ましい特性であり、直接塗布することで創傷感染を防ぐのに役立つ可能性があります。ただし、長期間摂取すると、腸管の正常な細菌叢が変化し、耐性病原体の増殖につながる可能性があります。(1988, Koide)
キトサンは、動物実験にて便秘の改善効果があることが報告されています。(2017, Wu)
新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果が指摘されています。(2022, Jaber)