多形滲出性紅斑の中医治療
多形紅斑(erythema multiforme)とは、皮膚に赤い発疹や浮腫が複数生じる病気です。猫の目のように見える(標的状病変)ことから、中医学では猫眼瘡(びょうがんそう)と呼ばれます。この標的状病変が薬疹との鑑別点です。
西洋医学では、多形滲出性紅斑と呼ばれます。発疹は1~2cmほどの大きさで、通常の皮膚との境界がはっきりしており、中央が少し盛り上がっていることなどが特徴です。好発部位は手足ですが、進行すると体全体に広がることもあります。同心円状湿疹は、自己免疫反応によって免疫複合体が血管壁に沈着することで血管炎を起こすために生じます。血液浄化療法の適応になることがあります。
軽症の場合と重症の場合では、治療法や経過が異なります。軽症の多形紅斑は比較的ありふれた病気で、薬物療法によって1~2週間程度で治癒する例がほとんどです。一方、重症の多形紅斑では発熱や関節痛、体のだるさなどの全身症状が現れます。ときに肝機能障害や多臓器不全などの合併症が起こることもあるため、慎重な管理が必要です。特に唇や目に赤みやびらんが生じる例をスティーブンス・ジョンソン症候群、それ以上に重症な場合を中毒性表皮壊死症と呼びます。軽症ではステロイド10mg朝7日間、中等度ではステロイド30mg朝5日間投与して減量していきます。
湿熱鬱膚証 | 紅色の猫眼様の皮疹が多発、丘疹、水疱が混在 | 舌質紅、舌苔薄で根部は膩、脈滑数または濡 | 清膚滲湿湯加減 | 蒼朮、柴胡、黄連、山梔子、升麻、厚朴、陳皮、沢瀉、沢蘭(活血化瘀)、丹参、赤小豆、薏苡仁、茯苓、紅花 |
寒湿瘀結証 | 暗紅色の猫眼様皮疹、手足に散在、寒冷刺激で悪化、温熱刺激で軽減 | 舌質淡紅、舌苔薄白で根部は微膩、脈沈緊または弦緊 | 当帰四逆湯加減 | 当帰、桂枝、赤芍、白芍、活血藤、鶏血藤、石楠藤(祛風湿)、細辛、乾姜、炙甘草、甲珠 |
毒熱入営証 | 大型の水疱性紅斑・瘀班・血疱が混在、鼻・口腔にびらん、発熱、頭痛、関節痛 | 舌質紅または絳、舌苔少、脈細数または滑数 | 犀角地黄湯加減 | 水牛角、牡丹皮、生地黄、金銀花、連翹、石斛、紫根(しこん)、沙参、薏苡仁、紅花、凌霄花(りょうしょうか、活血化瘀)、甘草 |
木田先生症例 | ||||
風湿熱毒上攻 | 顔の形がわからないほどの紅斑 | 舌診小さい紅斑、脈漏から弦 | 金銀花、連翹、黄連、石膏、牡丹皮、赤芍、白鮮皮、地膚子、生地黄、代赭石、炙甘草、蝉退、大青葉 |