接種後の心筋炎について

中日ドラゴンズの木下雄介選手が亡くなられました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

2021年7月6日9時半頃、ナゴヤ球場での練習中に息苦しさを訴え突然倒れました。意識を失い心肺停止の状態となり、トレーナーによるAEDでの処置後も意識は戻らず、11時半頃に名古屋市内の病院に救急搬送されました。7月28日に第一報を伝えたデイリー新潮の記事によれば、「練習場でかなり力の入った激しい運動をしている最中に倒れ、先に心臓周辺に問題が発生し、その影響が脳に及んで人工呼吸器を外すこともできない重篤な状態に陥っていた」と球団関係者が話した。翌7日には豊明市内の病院へ転院し治療を続けていた。倒れる約1週間前の6月28日に球団の親会社である中日新聞社の職域接種を利用し、新型コロナウイルスワクチン接種の1回目接種を受けていたとされるが、接種との因果関係は「不明」とされ、政府閣僚の記者会見でも言及されることはありませんでした。入院後も意識は回復することなく、8月3日に27歳で亡くなられました。死後の病理解剖にて、僧帽弁閉鎖不全症が確認され、心筋生検では心筋炎所見は認められず、死因は急性心筋梗塞と報告されています。

アメリカのCDCは、主に青年期の男性と16歳以上の若年成人に心筋炎が発生して、多くはmRNA COVID-19ワクチン接種後数日以内であり、症例は最初の投与よりも2回目の投与後に頻繁に発生していることを認めています。

厚生労働省のQ&Aでは、「1回目よりも2回目のmRNAワクチン接種後に、高齢者よりも思春期や若年成人に、女性よりも男性に、より多くの事例が報告されています。心筋炎や心膜炎の典型的な症状としては、ワクチン接種後4日程度の間に、胸の痛みや息切れが出ることが想定されます」と記載されています。

日本国内の報告頻度(令和3年9月10日)は以下です。

新型コロナウイルス感染症およびそのワクチンの副作用は、身体への侵入経路であるACE2で説明することが出来ます。

2020年にBunyavanichらは、鼻上皮のアンギオテンシン変換酵素2の遺伝子発現を年齢別に比較して、子供よりも20歳以降にACE2の発現が多いことを報告しました。

細胞表面にあるACE2は子供から成人になるにつれて増加し、一般的に女性よりも男性のほうがその密度が高い傾向があります。(2020年、Salhら)

また、その後成人から高齢になるとACE2の発現量が減少することが知られています。(2020年、Tavaresら)

ACE2の発現量は、運動や喫煙によっても増加するとされています。(2020年、Joshiら)(2020年、Kaiら)

実際、心房細動などの不整脈や、心筋梗塞などの心血管イベントを起こした人でACE2発現量や血中ACE2活性が高いことが報告されています。(2005年、Burrellら)

ACE2の発現量の多い人は、新型コロナウイルスおよびワクチンのリスクが高くなります。

具体的なリスク要因は、若者、男性、運動、喫煙、肥満、心血管イベントです。

木下雄介選手の場合は、心筋炎ではなく急性心筋梗塞が死因ですが、僧帽弁閉鎖不全症があったこと、男性、スポーツ選手、運動、年齢のリスク要因が重なっていました。

ACE2の発現量を増やす心血管系へのストレスがかかる要因である、体格が大きいこと、若者、運動、心疾患などの方は要注意です。