内的家族システム療法〜セルフのようなパーツ
内的家族システム療法、私の中に住む人たち: IFS(内的家族システム)へのお誘い、No Bad Parts、Internal Family Systems Therapy, Second Edition (English Edition)、Internal Family Systems Therapy with Children (English Edition) のまとめと考察です。
内的家族システム療法(IFS)では、セルフ(SELF)という概念を用いるところが大きな特徴です。セルフが現れている時は、神様のような資質(好奇心、明晰さ、思いやり、穏やか、自信、勇気、創造性、繋がり)が出てきます。
セルフは人が生まれながらに持っている神様のような存在で、隠れていたとしても、決して壊されることはありません。
セルフとは別に、人の持つ様々な面をパーツと呼びます。このパーツは、ストレスやトラウマに対して私達を守るための防衛反応として生まれた防衛者です。セルフでないものがパーツです。
セルフを体感、強化するための方法としてセルフ瞑想が提唱されています。フォーカシングのクリアリングスペースと同じです。
この防衛者としてのパーツの中で、「セルフのようなパーツ」(Self-like manager)が度々存在します。
内的対話(in-sight)が使えるクライアントは、セルフに似たパーツを見ますが、それはそれがパーツであってセルフではないことを教えてくれます。なぜなら、「セルフ」が具現化されたとき、私たちは腕、手、鼻、膝、脚を見るが、独立した実体を見ることはないからです。
もしクライアントが内的対話(in-sight)が使えるのであれば、クライアントにこう尋ねるだけで、自己のような部分を自己と区別することができます:あなたは、そのパーツがどう見えますか?あなたは自分のパーツと直接一緒にいますか?セルフは意識の座ですから、セルフが内面世界でリードしているとき、私たちは自分自身を見ることはありません。むしろ私たちは、家族や友人と食卓を囲むように、自分のパーツと直接一緒にいるのです。それに対して、セルフに似たパーツが主導権を握っているときは、セルフに似た部分が他の部分と相互作用しているのが見えます。
ISFにおけるコミュニケーションは、内的対話(in-sight)とダイレクトアクセスの2つがあります。内的対話(in-sght)はクライアントのセルフが利用可能な場合のセルフを介する三者会話で、ダイレクトアクセスは、利用可能でない場合の二者会話です。
セラピストは主にセルフと共にセラピーを進めますが、セルフのようなパーツは神のような資質を持っていません、またリーダーシップが足りませんので、何かしら違和感や矛盾を感じます。
一見セルフにアクセス出来るのに、セラピーが進展しない時、クライエントが何らかの意志によって動かされると感じる時、セラピーが早く進みすぎる時、セラピーが上手く行き過ぎている時などでは、セルフのようなパーツが出てきている可能性があります。
セルフに似たパーツも、他のパーツをコントロールする役割と、何らかの負荷を背負って、防衛している役割を担っていることを覚えていることが重要です。
多くの場合、防衛的なパーツ(プロテクター)が微妙な方法で妨害を行ってきます。防衛者は、極端な話題や気が散るような話題であっても、合理的に聞こえ、納得させることが得意です。これは、彼らの行動を中傷しているのではありません。彼らは単に自分の仕事が上手いだけです。
初心者のIFSセラピストは、餌に釣られて、気が散らすパーツを信じてしまったり、極性においてどちらかの側に立つように勧誘され、その行動に関して他のパーツと口論してしまう危険性があります。
セラピストがどちらかの側につくことは、必ず問題を引き起こします。これに対して、経験豊富なIFSセラピストは、高度に発達したパーツ検出器を持っています。声の調子、姿勢、内容の極端さなどの合図に注意を払うことで、経験豊富なIFSセラピストは、防衛者が混ざり合い(ブレンド)、セルフが主導権を握っていないことを感じ取ることができます。
初心者のIFSセラピストが経験を積み、IFSを粘り強く使っていくうちに、プロテクターと議論しないことを学びます。防衛者の活動レベルは、そのリスク評価と現状を乱すことへの恐怖に見合ったものであり、それが極端なものであってもです。恐怖を抱く保護者と議論しても、極端な立場を取る人と議論するのと同じように、彼らをより極端にするだけです。
■セルフのようなパーツの非ブレンド化
1.セルフのようなパーツ(物事を早く進めようとするパーツ、極端な結論を出すパーツ、説明上手のパーツなど)が居ると思うのですが、少し時間を取って、内面を探してもらっていいですか?とセラピストがクライアントに投げかけます。
2.セルフのようなパーツ(物事を早く進めようとするパーツ、極端な結論を出すパーツ、説明上手のパーツなど)に少し休憩してもらって、私たち(セラピストとセルフ)をただ少し離れて見ていてもらえますか?と尋ねてみてくれませんかと頼んでみる。(承認)
3.あなた(セルフ)はセルフのようなパーツに対してどのように感じていますか?と尋ねます。
(クライエントがセルフ主導になるように招き入れる言葉かけ)
あるパーツが自己否定的であれば、そのパーツとセルフとの関係に注目します。そうすれば否定的な自己判断は自動的に否定されます。
4.セルフのようなパーツが出てきた場合、ゲシュタルトセラピーの「エンプティチェア」の技法を使って、セルフのようなパーツとセルフとの対話を促進して、非ブレンド化する方法があります。クライアントは、それぞれを順番に体現しながら、2つの椅子の間を移動し、2人の関係が進展するまで対話を続けます。
2つのパート間、あるいは複数のパート間の対話を創り出すために、同じ手順を使うことができます。パーツにアクセスして椅子を割り当てたら、クライアントは椅子の間を移動して、それぞれのパーツが別れて(非ブレンド化)話すことができます。また、クライアントはひとつの椅子に座ったまま、少し姿勢を変えたり、ソファの上で横に動いたりして、パーツの切り替えを指定することができます。
セルフのようなパーツは、自分が運転席にいることを好むので、最初はパーツであることを否定し、すぐにブレンドが解けることに同意しないことがよくあります。
セルフのようなパーツは、主導権を渡すことを躊躇うので、セルフから粘り強く、興味・好奇心→理解→受容→信頼→愛着でアプローチして行きます。
一方、セラピストの役割は、自己主導型の家族セラピストが外部の家族に関わるのと同じように、これらのパーツの仲介に関わることだけです。セラピストはパーツと親しくなり、できるだけ早くクライアントのセルフを参加させます。
防衛者が邪魔をしたり、注意をそらしたりするとき、私たちはその極端な、あるいは余計な発言を無視し、その必要性について尋ねることを優先します。なぜ今、邪魔をする必要があるのですか?
もしそのパーツが理由を言わないなら、私たちはプロテクターの最も一般的な2つの恐怖について大声で推測して、指摘する方法があります。それは①追放者(エグザイル)による感情的な圧倒と②防衛者の役割を失うことです。このうちのひとつは大抵は的を得ています。
防衛者ですが、その世話好きと親切心には、亡命者のことを考えないようにするという意図も含まれています。セルフのようなパーツはしばしば自分がセルフであると信じ、クライアントのエグザイルに気づかれずにセッションを終えるために、セラピストが望んでいると信じるものなら何でも従うことによって、特にセラピストであるあなただけでなく、一般的な人々を喜ばせようとする方向性を持っています。