ミネラルの吸収と阻害
胃酸分泌の抑制は、人間の亜鉛吸収を減少させることが報告されています。(1991, Sturniolo)
胃酸の少ない胃では、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの微量栄養素の食事による代謝と吸収が損なわれます。(1993, Wood)(2015, Sipponen)
H2ブロッカーを服用して胃のpHを上げると、亜鉛を服用しても血清亜鉛レベルが上がらないことが報告されています。(1995, Henderson)
亜鉛吸収の阻害剤が最も一般的な原因因子である可能性が最も高く、 穀物、とうもろこし、米、豆類などに含まれるフィチン酸は、複合食品からの亜鉛吸収に強い阻害作用を及ぼします。(2002, Adams)
フィチン酸は、食べ物からの鉄の吸収も阻害します。(2004, Hurrell)
鉄の吸収は、添加したフィチン酸に用量依存性に阻害され、その阻害作用はアスコルビン酸によって中和されます。(1989, Hallberg)
鉄は、サプリメントで一緒に与えられた場合、亜鉛の吸収にマイナスの影響を与える可能性があります。(1985, Sandström)
マグネシウムとカルシウムは共通のメタルトランスポーターを介するために、吸収される際に拮抗すると考えられています。(1994, 糸川)
鉄と亜鉛と銅は、吸収に関与する二価メタルトランスポーターのDMT1への競合的結合によって、吸収に際して互いに阻害し合います。鉄剤の長期補給によって、鉄の主要なトランスポーターであるDMT1がダウンレギュレートして、亜鉛と銅の吸収が減少します。Zn-Cu 競合は、Cu の蓄積を避けるため、ウィルソン病への亜鉛補給が治療に有益に利用されてきました。また亜鉛の長期補給によって銅欠乏が起こることが指摘されています。(2006, Arredondo)(微量ミネラル)
亜鉛の長期補給による銅欠乏症によって、貧血、白血球減少症および潜在的に不可逆的な神経学的症状(脊髄症、感覚異常、運動失調、痙縮)を引き起こす可能性が指摘されています。(Zinc | COVID-19 Treatment Guidelines)(2022, Francis)
亜鉛の長期補給による銅欠乏症は、亜鉛をキレートするメタロチオネインをアップレギュレートしますが、このメタロチオネインは銅への親和性がより高いために銅欠乏症となります。(2022, Francis)
亜鉛と同族元素であるカドミウムも、亜鉛の吸収を阻害します。(2000, Lonnerdal)
食事中のタンパク質の量は、亜鉛の吸収にプラスの効果がありますが、牛乳由来のカゼインは、他のタンパク質源と比較して、亜鉛吸収の適度な阻害効果を持っています。(2000, Lonnerdal)
プレバイオティクス、プロバイオティクスは、ミネラルの吸収を促進することが報告されています。(2007, Scholz-Ahrens)