骨粗鬆症治療薬の話

ビスフォスフォネート(Bisphosphonate)は、骨粗鬆症の予防と治療に最も広く使用されている薬剤で、3年から5年の短期間の治療では脊椎骨折と股関節骨折が減少しますが、5年以上の長期使用では有効性が証明されていません。副作用として、非定形大腿骨骨折や顎の骨壊死が知られています。(2017, Khosla)(2012, Whitaker)

ビスフォスフォネート系薬剤のアレンドロネート治療を 5 年後に中止した場合と 10 年間継続した場合の効果を比較したところ、骨折リスクは有意差はありませんでした。(2006, Black)

ビスフォスフォネート系薬剤のゾレドロン酸を6年間継続して中止した患者と9年間継続した患者では、股関節骨密度の平均変化および骨折リスクは有意差はありませんでした。(2015, Black)

ビスフォスフォネート系薬剤のリセドロネートを5年間継続して中止した患者と7年間継続した患者では、骨折リスクは有意差はありませんでした。(2004, Mellström)

■ビスフォスネートの作用機序

コレステロール合成経路を阻害することによって、骨吸収性の破骨細胞を選択的にアポトーシスさせます。(2002, Lindsay)(2020, Rogers)

骨の強度と完全性は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成の間の微妙なバランスを維持することにかかっています。(2000, Rodan)

骨吸収だけを阻害する薬剤ではこのバランスを欠くために、長期使用での有効性がないだけでなく、骨関係の副作用(非定形大腿骨骨折や顎の骨壊死)が出ると考えられます。

骨粗鬆症の治療に使われる抗RANKL抗体製剤は、破骨細胞の分化、成熟、生存に最も重要な役割を担っている破骨細胞分化因子(recepter activator of nuclear factor-κB ligand:RANKL)に対する完全ヒト型モノクローナル抗体IgG2抗体です。

ビスフォスネートと同様の作用機序の破骨細胞を抑制する抗RANKL抗体製剤も、同じ骨関係の副作用があることが報告されています。(2019, Shibahara)