新型コロナと亜鉛
まとめ:新型コロナ感染症および新型コロナ後遺症において血清亜鉛の低値は一般的ですが、亜鉛補給は血清銅を測定して、銅欠乏に注意しながら行う必要があります。
亜鉛は新型コロナ感染症および呼吸器感染症に対して様々なメカニズムで保護的に働きます。(2020, Skalny)
新型コロナ感染症では血清亜鉛が低値を示し、転帰リスクと関係することが報告されています。(2020, Jothimani)
新型コロナ感染症では、血清亜鉛、鉄、セレン、カルシウムが低値、血清銅と銅/亜鉛比が高値であり、これらが重症度と関係することが報告されています。(2020, Skalny)
新型コロナ後遺症でも、急性の新型コロナ感染症と同様に血清亜鉛が低値を示すことが報告されています。(2023, Al-Hakeim)
亜鉛は、抗ウイルス防御メカニズムを含む、自然免疫および適応免疫に関連する多くの酵素反応に必要です。したがって、亜鉛欠乏症は、免疫細胞機能 (B 細胞、T 細胞、およびナチュラル キラー細胞) に直接影響を与える免疫系の障害をもたらします。(2023, Mey)
新型コロナ感染症の外来患者に亜鉛を補給した臨床試験は、症状の持続期間を有意に短縮することが出来ませんでした。(2021, Thomas)
亜鉛の長期補給による銅欠乏症によって、貧血、白血球減少症および潜在的に不可逆的な神経学的症状(脊髄症、感覚異常、運動失調、痙縮)を引き起こす可能性が指摘されています。(Zinc | COVID-19 Treatment Guidelines)(2022, Francis)
亜鉛の長期補給による銅欠乏症は、亜鉛をキレートするメタロチオネインをアップレギュレートしますが、このメタロチオネインは銅への親和性がより高いために銅欠乏症となります。免疫強化目的で、亜鉛サプリを服用していたことろ、血清銅が低値、亜鉛が高値となり、好中球減少、大球性貧血が悪化しました。それに対して、亜鉛補給中止、銅を補給したところ速やかに改善した症例が報告されています。(2022, Francis)
新型コロナ感染症に対して亜鉛を補給した臨床研究は現在進行中のものが約20あり、今後の結果によって亜鉛補給の是非が変わる可能性があります。(2022, Balboni)
ケトジェニックダイエット(ケトン食)では、銅欠乏により白血球減少が見られることが知られています。(ケトン食と白血球減少)
銅欠乏の原因は、亜鉛や鉄の過剰摂取による銅の吸収阻害、高脂肪食による銅の過剰排泄です。