自閉症の低コレステロール血症の治療

(2021年7月24日の記事を加筆修正しました。)

体内のコレステロールの内、約20%は食品由来であり、約80%のコレステロールは、肝臓を中心に全身で生成され、12~13mg/ kg体重/ 日 生産されています。

医学では血中コレステロールは高いことが問題視されてきましたが、体内の代謝から見ると根っ子に存在する中間代謝物であり、コレステロールからステロイドホルモン、胆汁酸、ビタミンDなど作られますので、血中コレステロールが低いと様々な問題が起こってきます。

低コレステロール血症を合併する自閉症児が、対照群と比較して多いことが報告されています。(2019, Benachenhou)(2021, Tiemey)

SLOS(スミス・レムリ・オピッツ症候群)は、コレステロールの最終合成段階の酵素の遺伝的な欠損により、重篤な低コレステロール血症に加えて、特徴的な顔貌(両側の眼瞼下垂、上向きの鼻孔、小頭症、両耳側狭窄、小さな顎)、短い親指、足の指の融合、光過敏症、攻撃的行動、慢性疲労、房室中隔欠損症、白内障などぼ症状が出る疾患です。

7-Dehydrocholesterolからコレステロールを合成する酵素(7-デヒドロコレステロール還元酵素、7-dehydrocholesterol reductase)の欠損が原因です。

SLOSの中で、身体症状が目立たず、自閉症症状が前景に立つ症例もあり、SLOSの71〜86%は自閉症の診断基準を満たすと言われています。

卵黄などのコレステロールを多く含む食品卵、レバー、ししゃも)やコレステロールのサプリによってSLOSの自閉症症状が改善すること(1997, Elias)(2008, Aneja)(1997, Irons)(2010, Szabo)(1998, Nwokoro)から、自閉症と低コレステロール血症(160mg/dl以下)との関連が推測されています。

自閉症患者では、SLOS の診断と一致する 7DHC レベルの異常な増加や、コレステロールの他のステロール前駆体の異常レベルを示すサンプルは存在しなかったが、極端にコレステロールの低いケースが存在することが報告されています。(2006, Tiemey)

自閉症の人の中に、SLOS遺伝子キャリアの人(7-デヒドロコレステロール還元酵素活性の低い方)が存在する可能性が指摘されています。

これに対して7-デヒドロコレステロール還元酵素の補酵素のビタミンB3を、大量に摂るメガビタミン療法による治療の可能性があります。三石理論の確率的親和力理論に基づく方法です。

また、コレステロールの合成経路で見ると、律速酵素はスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が作用するヒドロキシメチルグルタリル-CoA レダクターゼ(HMG-CoA還元酵素)です。

この律速酵素の化学反応の補酵素も、活性型ナイアシンのNADPです。補因子としてはマグネシウムが重要です。

一方で、SLOSの方へ食事性コレステロールの投与によって臨床効果が認められなかった報告(1998, Ryan)や、食事由来のコレステロールは BBB を通過できず、脳内の低コレステロール レベルを補うことが出来ないこと、神経学的症状は、7-デヒドロコレステロール (7-DHC)、DHCR7 基質、またはその酸化代謝産物の蓄積によって引き起こされる可能性も指摘されています。(2019, Segatto)