グルカゴンルネッサンス
これまで、糖尿病の原因は、「インスリンに問題があり、高血糖を招く」という考えが定説でした。
最近は、「インスリンの拮抗ホルモンと言われるグルカゴンの過剰によって高血糖を招く」という説が主流になりつつあります。
ルネッサンスとは、復活などを意味する言葉です。
1970年代に、糖尿病の原因は、「インスリンの不足とグルカゴンの過剰」という説が既に唱えられていましたが、その後はインスリンが主役となって来ました。
現在は逆に、後者のグルカゴンが脚光を浴びているので、これをグルカゴンルネッサンスと呼ばれます。
グルカゴンが長年脚光を浴びてこなかった理由のひとつとして、グルカゴンの測定が出来なかったことが理由です。グルカゴンは、そのアミノ酸配列がほとんど重複する生体物質がいくつか存在し、その交差反応から正確に測定することが極最近まで困難でした。(実験医学20249月号)
これまでの糖尿病の治療では、インスリン関連の薬剤を使っても、血糖のコントロールが不十分であった人にも、グルカゴンの分泌を抑制するインクレチン関連薬(DPP-4 阻害薬およびGLP-1 受容体作動薬)が2型糖尿病に予想以上の効果が認められています。
インスリンとグルカゴンの生理作用を見ると拮抗関係になっています。
グルカゴンルネッサンスは、この拮抗関係の問題よりも、むしろグルカゴンが主犯であるという提唱です。
すべての糖尿病患者で高グルカゴン血症になっていることが明らかにされています。
本来は、グルカゴンの分泌はインスリンによって抑制されますが、インスリンによるグルカゴンの抑制が不十分なために高グルカゴン血症になると言われています。
インスリンが役に立たないときに、グルカゴンの分泌を抑制するのがインクレチンのひとつのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)です。
GLP-1を分泌するL細胞は、小腸下部から大腸、直腸にに存在して、食物繊維の刺激によって分泌されます。特に腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維です。
糖尿病と食物繊維の摂取との年代別推移は以下です。逆相関になってます。
炭水化物=精製糖質+食物繊維ですから、精製糖質(主にパンや麵)の消費量がうなぎのぼりになっています。
結論としては、糖質制限・高タンパク食ですが、糖質制限の中身は、「精製糖質は控えるが、食物繊維がしっかり摂る」です。
最も問題になるのは、食物繊維の少ない精製糖質の過剰摂取です。
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食物繊維の目標量は、18~69歳では1日あたり男性20g以上、女性18g以上とされています。
現代人の主食は精製糖質(米、パン、麵)です。精製糖質を摂りすぎるとインスリンが終日ダダ漏れ状態になって、インスリンが効きにくくなったり、膵臓が疲弊して、インスリンが出せなくなってきます。
さらに、食物繊維が足りないので、GLP-1が産生出来なくなり、グルカゴンの過剰分泌が起こって、高血糖になります。