あなたの体は9割が細菌

アランナ・コリン先生の「あなたの体は9割が細菌」の内容の一部を抜粋します。

■消化管には、100兆の微生物が存在し、その種類は4000種類になる。

ヒトの遺伝子の数は、小麦やマウスと大差なく、2万1000個程度であるが、微生物が持つ遺伝子の数は、この100倍以上と言われている。

■腸内細菌はビタミンや短鎖脂肪酸をはじめ様々な生理活性物質を作って、ヒトに提供しているが、ヒト自身が遺伝子変異を経て、この生理活性物質を自前で作ろうとすると膨大な年月が必要となる。

微生物であれば、短い期間で遺伝子の変異が可能であり、ヒトは自分が必要な生理活性物質を微生物に作らせる、言わばアウトソーシングしている。

■21世紀病(肥満、糖尿病、自閉症、喘息、アトピー、クローン病、多発性硬化症、IBSなど)と言われる疾患は、1940年代の10年間を境に急増している。

■太った人と痩せた人では、腸内細菌叢に違いがあり、同じカロリーの食事を摂っていても、体重に違いが出てくる(カロリー理論が間違いである証拠のひとつ)。

■現在ただひとつ堅実な効果を上げている肥満治療法は、胃バイパス手術であるが、そのメカニズムとしては術後に腸内細菌叢が変化することが推測されている。

■エレンボルトの仮説。抗生剤投与を契機とした、クロストリジウム属の増殖が遅発性自閉症の原因である。クロストリジウムに対する抗生剤を投与中だけ自閉症症状が改善した。

■腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸などの物質が自閉症の発病に関与するという説もある。

■アレルギーを説明する「衛生仮説」(アレルギー患者が先進国では横ばい、新興地域では増加、辺縁地域では皆無であり、衛生水準の向上とアレルギーの増加が一致する)で説明するのには限界がある。

腸内細菌叢は異物なのに生体は攻撃しない。

現在は「旧友仮説」(抗生剤の使用、現代食などにより先進国では、腸内細菌叢の多様性が低下しており、これがアレルギーの関連している)に更新された。

■人体は腸内細菌叢の容器であり、お互いにギブアンドテイクの関係である。

■免疫系の門番は、ホスト本体ではなくバクテロイデス・フラジリスという腸内細菌の一種がその役割を担っている。

■辺境の地では若者でもニキビの人はいない。これも腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)が原因。

■ニキル・ドゥランダハルの説では、肥満はカロリーだけで説明出来ない複雑な病気である。

■抗生剤により太ることはよく知られており、太らせるために畜産業で多用されている。腸内細菌叢のディスバオーシスが機序として考えられているが証明はされていない。

■自閉症のワクチン原因説も腸内細菌叢のディスバイオーシスを原因として想定している。

■また自閉症児は耳の感染症などで、通常時の3倍の抗生剤の投与を受けてきているというデータもあり、腸内細菌叢のディスバイオーシスが原因のひとつと推定されている。

■21世紀病を克服するためには、100年前の食事に戻せば良い。

■腸内細菌層は、現在でも自給農民として暮らす人と現代食を食べる人では異なっている。

炭水化物摂取量と脂肪摂取量のバランスによっても、特徴的に変化してくる。

■1940年代は1日70gの食物繊維を摂っていたが、現在は1日20gまで減っている。腸内細菌へのエサが足りない状態になっている。

■食物繊維の摂取の減少が、肥満増加の主犯だとしても、脂肪と糖質に無罪を言い渡してはいけない。

■帝王切開の増加が、腸内フローラのディスバイオーシスを招き21世紀病の一因となっている。

■母乳に含まれるオリゴ糖や微生物が、子供の腸内フローラを育てる。粉ミルクで育った赤ん坊は、感染症、肥満、喘息などに罹るリスクが高い。

■①12000人が参加した63カ所の臨床試験で、プロバイオティクスは、抗生剤起因性下痢の発生率をかなり下げることが証明されている。

②感染性の下痢になった乳児にもプロバイオティクスの有効性は証明されている。

これら以外のケースでは、プロバイオティクスの効果は限定的である。

■プロバイオティクスについての注意点として、①多様な菌が入っている、②多量であるほど良い、③砂糖の入っているものは避ける、④好気性菌のラクトバチルス(乳児のための細菌で成人では不要)入りも避ける。

■糞便移植は、過敏性腸症候群に有効性があるが、下痢型には80%、便秘型には30%と差がある。

■アメリカではオープンバイオームという糞便バンクがある。これは、ドナー募集、スクリーニング、注入液の調整、サンプルの出荷までを行う。患者は、ファイバースコープを使ってくれる医者を見つけることと、250ドルを支払うことだけである。

ドナーの選択に関しては、50人の募集者に対して、適合者は1名の割合である。

すでに2000名のクロストリジウムディフィシル(Clostridium difficile)患者が治療を受けた。

■マウスでは糞便移植で、痩せることが出来ることが報告されている。

■プロバイオティクスは一時的な効果しか無いので、持続的な効果を得るにはプレバイオティクスが大事。

■カナダでは合成糞便が研究されている。