自閉症における亜鉛と銅

亜鉛と銅、およびカドミウムと水銀は周期表での位置関係は近い関係です。

亜鉛と銅は体内の必須元素ですが、カドミウムと水銀は有害金属です。

これらの元素の拮抗関係にあり、亜鉛を中心とした「椅子取り合戦」を行っています。

つまり、亜鉛⇔銅、亜鉛⇔カドミウム、亜鉛⇔水銀の拮抗関係があります。

拮抗関係とは、必須ミネラルの本来の役割を別の元素が邪魔をしてしまうことですが、この4つの元素に関しては、もうひとつ大事なことは、メタロチオネインによって体内量が調整されていることです。

メタロチオネイン(MT)は、肝臓で合成されるタンパク質で、2価の金属イオンの7〜10分子と結合することが出来、その結合力は水銀>カドミウム>銅>亜鉛の順番です。

この順番は、生体内に存在する金属イオンの量(つまりその金属の必要量)に反比例しています。

逆に言えば、その金属のヒトに対する毒性に比例しています。

MTによって、亜鉛過剰があればMTが増産されて、より結合力が強い銅とMTが結合して銅欠乏が起き、銅過剰があればMTが増産されて、より体内量が多い亜鉛ともMTが結合して亜鉛欠乏が起きます。

■自閉症で問題となるのは、血清中の亜鉛欠乏と銅過剰です。

ウイリアム・ウォルシュ博士は、自閉症における血清銅/亜鉛比率の有意な上昇を報告しています。

2009年にFaberらは、230人の自閉症児を検査して、血清亜鉛/銅比の有意な低下を報告した。

2011年にPriyaらは、45名の自閉症児の爪と毛髪中のミネラルを調べ、亜鉛欠乏と銅過剰を報告した。

2011年にYasudaらは、1967人の自閉症児の毛髪検査にて、亜鉛欠乏を指摘しました。

2013年にBjørklundは、総論にて、「亜鉛の欠乏は、酸化ストレスの増加に伴って二次的に起こってくる。一方で銅過剰は、酸化ストレスの増加が一因であるが、それ以外に、腸内フローラのディスバイオーシスからサイトカインの異常を来し、それが肝臓のセルロプラスミンの過剰産生を起こして銅過剰になる。」と推論しています。

体内のミネラルは最適量が決まっており、その時の貯蔵量で過剰や欠乏という病態が起こります。

一般的に体内のミネラルに関しては、便から75%、尿から10%、汗から3%、爪と毛髪からはそれぞれ1%排泄されています。

これらの排泄量を測定することによって、貯蔵量をある程度予想することが可能です。

血液検査や皮膚での検査(オリゴスキャン)でも、ある程度貯蔵量を予想することが可能です。

完全な検査はありませんので、検査結果を見て総合的に判断していくことになります。