自閉症の亜鉛欠乏・銅過剰の治療

検査結果で、血清中の亜鉛欠乏か銅過剰が見つかれば、治療の適応となり得ます。

ウイリアム・ショー博士の治療指針(自閉症と広汎性発達障害の生物学的治療法)を参考に記載します。

この血清中の亜鉛欠乏・胴過剰は、メタロチオネインの代謝異常を想定されています。

ほとんどの人は、銅の補給がなくても、食事に必要な量よりも約25%多くの銅を摂取しますので、より問題となるのは、銅過剰です。

1.亜鉛の補給

医薬品であれば、プロマック、サプリメントであればOptic Zincなどを服用していきます。

ウォルシュ博士は、1~3mg/Kgの亜鉛を服用することを勧めています。

亜鉛の服用によって、胃痛や胃の不快感がおきる場合は、食後に服用するようにします。

亜鉛によってメタロチオネインを誘導して、銅過剰を治療します。

メタロチオネインの産生に遺伝などが原因で問題がある場合は、メタロチオネインの産生を亜鉛投与で誘導することが出来ないために、亜鉛補充療法を行うと単に亜鉛過剰症となります。メタロチオネインの遺伝的欠損の有無は判定が困難なために、亜鉛補充療法は少量から漸増します。

メタロチオネインの遺伝的欠損のために、亜鉛補充療法で銅過剰が改善しない場合は、キレート療法を定期的に行うことをショー博士は推奨されています。

2.キレート剤のペニシラミン

ウイルソン病の治療にも使うペニシラミンは、求核性の強いチオール基を持つので、銅、水銀、鉛、亜鉛などの重金属とキレート錯体を形成して、重金属の解毒治療に使うことが出来ます。

銅過剰と同時に重金属中毒がある場合の治療選択枝として有用です。

肝障害や腎障害や顆粒球減少症などの副作用を起こすことがあるので、検査での経過観察が必要です。

亜鉛とも結合するので、亜鉛欠乏症状が強くなる場合があるので注意が必要です。

鉄、マグネシウム、亜鉛サプリと同時に服用すると、消化管内で結合して、便中に排泄されてしまうことがあります。

ビタミンB6拮抗作用を持つので、同時にビタミンB6を投与することが望ましいです。

ペニシラミンと同様に、DMSAやDMPSも銅過剰の治療に有用です。

ウイルソン病では、肝臓から胆汁への銅排泄が遺伝的に出来ないために体内に銅が蓄積します。Kayser-Fleisher ringや精神症状が出現します。銅は主に肝臓に蓄積して、セルロプラスミンの低下もあり、血清銅は通常は低値になります。

3.その他のキレート剤

テトラチオモリブデン酸アンモニウム、テトラチオモリブデン酸コリン、クルクミンなどがより副作用が少なく、効果がある治療薬として検討されています。

4.抗酸化剤

酸化ストレス(メチレーション回路の問題など)が直接原因であり、二次的に亜鉛欠乏、銅過剰が生じているとも考えられており、抗酸化剤による治療が有効です。

ウイルソン病では肝臓内のビタミンE濃度が低下していることが報告されています。

・ウイリアム・ショー博士は、副作用の少ないキレート剤のテトラチオモリブデン酸アンモニウムを投与した後に、亜鉛補充療法を行うことをベストな方法として推奨しています。

・亜鉛欠乏、銅過剰という病態が、自閉症の直接原因ではなく、二次的に起こっている可能性に留意する必要があります。

・根本原因の仮説としては、酸化ストレスや腸内フローラのディスバイオーシスなどがあります。