ジスキネジア

ジスキネジアは、不随意運動(無意識的で反復的な体の動き)の一種です。

①抗精神病薬や胃薬品を長期間服用後に起きるものは、口唇をもぐもぐさせたり舌のねじれや前後左右への動きや歯を食いしばったりする動作を無意識に繰り返します。遅発性ジスキネジアと呼ばれます。

②パーキンソン病治療におけるジスキネジアとは、長期間にわたるレボドパ (L-DOPA) 療法によって起き、時間とともに起こったり消えたりする不随意運動です。L-DOPA誘導性ジスキネジアと呼ばれます。

運動症状の変動 (motor fluctuationという) はレボドパ治療開始5-10年後の患者の半数以上に起こり、年数が長くなるほどジスキネジアを起こす患者の割合は高くなります。

ジスキネジアが最も起こりやすいのは、レボドパの血中濃度がピークに達する時間帯で、これを ピークドーズ・ジスキネジア(peak-dose dyskinesia 、定訳がない)と言います。より進行すると二相性ジスキネジア(diphasic dyskinesia、こちらも定訳はない)といって、血中濃度が上昇する時と低下する時の二回ジスキネジアが起こります。

③難病の芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症では、乳児期早期からの発達遅滞および間歇的な眼球回転発作など眼球運動異常と四肢ジストニ アで発症します。

遅発性ジスキネジア、L-DOPA誘導性ジスキネジア、AADC欠損症のいずれの病態でも、ドーパミン経路の渋滞が起こってL-ドーパが過剰になってます。

また、即時的に起こる病態ではなく長期で起こり、なおかつ難治性であることから、「L-ドーパの蓄積に伴う二次的で可塑的な変化」を推測します。

また遅発性ジスキネジアが怠薬の多い人に発症すること、L-DOPA誘導性ジスキネジアの症状発現から見ると、薬の血中濃度との関連が伺えます。

治療は簡単ではありませんが、栄養面からの根治療法としては、以下を考えます。

原因薬剤の中止(ただし原因薬剤の中止によって増悪する可能性もあるので注意が必要です)。

原因薬剤を中止できない場合は、血中濃度が安定するように、コンプライアンスの問題を改善する。

ビタミンB6の大量服薬。

文献的には、マンガン、ビタミンEの服用。

その他の栄養学的なバランスを最適化させる。

2013年の治療の総論では、ドーパミン受容体遮断薬の中止が原則であり、すべての定形および非定形神経遮断薬が原因となる可能性があるので注意が必要です。治療候補薬としては、レゼルピンなどのドーパミン枯渇薬とバルプロ酸などのGABA作動薬が上げられています。