短鎖脂肪酸とケトン体との補完関係

まとめ:食物繊維から作られる短鎖脂肪酸と、絶食時に体内で増えてくるケトン体は、補完的にエネルギー代謝調節だけでなく、炎症、免疫、発癌抑制、精神機能など多くの生体機能のバランスを調整しています。

糖質しか含まない精製糖質は、食物繊維を含まないので短鎖脂肪酸も作れず、ケトン体も減らしてしまうために、多くの生体機能のバランスを壊します

腸内細菌が食物繊維をエサにして作る短鎖脂肪酸は、交感神経に多く分布する短鎖脂肪酸受容体であるGPR41を介して、交感神経系を亢進させてエネルギー消費を促進させます。一方で、飢餓状態の時に脂肪細胞の中性脂肪を分解して作られるケトン体は、短鎖脂肪酸に構造式がよく似ていますが、反対にGPR41にアンタゴニストとして作用して、交感神経系を抑制してエネルギー消費を抑えます。

生体は食事の有る無しに対応して、GPR41を介してエネルギーバランスを調整しています。

交感神経系の促進・抑制だけでなく、食事の有る無しに対応して短鎖脂肪酸とケトン体が生体に対して、炎症、発癌抑制、免疫、精神などのバランスを調整しています。

短鎖脂肪酸とケトン体は、お互いが補完関係にあります。

飢餓を繰り返した人類が、生体を維持するための緻密なメカニズムが伺えます。

ヒトの祖先のチンパンジーは主に堅実食でした。少量の果糖と食物繊維が堅実の主成分ですが、この食物繊維から作られた短鎖脂肪酸で、エネルギー代謝だけでなく、多くの生体機能を営んできました。

食べ物が無くなって飢餓状態になると、蓄えられた脂肪細胞から中性脂肪が分解されてケトン体が作られて、このケトン体が短鎖脂肪酸と入れ替わって、エネルギー代謝や沢山の生体機能を担います。

構造式の似たケトン体と短鎖脂肪酸が、飢饉と飽食の時期に対応するトレードオフの関係になってます。

精製糖質を過食していると、短鎖脂肪酸もケトン体も両方共作ることが出来ないので、生体機能のバランスが大きく崩れてしまいます。

この短鎖脂肪酸とケトン体の補完関係は、食物繊維を含まない単純炭水化物(精製糖質)がかなりリスクのある食べ物であり、糖質制限という食事療法が基本的に重要な食事療法であることを意味しています。