ビタミンB3の重要性
ビタミンB3は、生体代謝でTCA回路をはじめとして多くの代謝反応の補酵素として働いています。このビタミンB3には、作用の強いナイアシン(ニコチン酸)と、作用の弱いナイアシンアミド(ニコチンアミド)があります。
1.抗酸化の要となるビタミンB3群
ビタミンB3は、酸化還元反応の補酵素として働くNADとNADPの前駆体でもあります。このNADとNADPは、活性型ナイアシンとも呼ばれます。
生体内での酵素反応の約20%は酸化還元反応であることから、このビタミンB3群(ナイアシン、ナイアシンアミド、NAD、NADP)は、非常に重要性が高いと言えます。
体内の酸化を防ぐための抗酸化物質として、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンEなどがありますが、これらは酸化還元反応によってリサイクルして何度も利用されます。これらをリサイクルするために活性型ナイアシンが使われます。
抗酸化物質はこれら以外にも沢山存在していますが、リサイクル出来ない1回しか使えない抗酸化物質よりも、リサイクル出来る抗酸化物質がより重要で、これらのリサイクルを行うビタミンB3群が抗酸化の要と言えます。
2.糖質制限とビタミンB3
糖質制限を行うと、体内でのケトン体が増えてくるために覚醒度が上がりますが、このために睡眠障害が起こってくる場合があります。寝付きが悪くなったりや昼寝が出来ないなどです。糖質を過食すると眠気が出るのと反対の現象です。良好な睡眠を取るために、セロトニン経路を強化するビタミンB3を摂取する方法があります。
また、ペントースリン酸経路にてグルコースから核酸を作る際に、酸化還元反応の要となるNADPHが作られますが、糖質制限を行うと、摂取するグルコースが減るために、作られるNADPHも減ります。そこでビタミンB3を摂取して補う方法があります。
グルコースを摂りすぎるとペントースリン酸経路が促進されて、核酸合成が盛んになり発癌しやすくなります。一方で極端な糖質制限を行うと、ペントースリン酸経路が抑制されるためにNADPHの産生が抑制されて、身体の抗酸化力が低下します。抗酸化力の点から見ると、グルコースが非常に重要であることが解ります。糖質過食も断糖も問題があり、栄養素に関しては何事もバランスが重要です。
3.加齢とビタミンB3
抗酸化力は年齢と共に加速度的に低下します。このことは若い時は好き放題食べても問題は少ないですが、年を取ると抗酸化力に注意した食事が必要になることを示唆しています。
この意味でも年を取るほど、ビタミンB3などの抗酸化物質を摂取することが重要になります。
4.脳の発達とビタミンB3
脳の発達の問題として、酸化ストレス、環境毒素の解毒の問題があります。ここでも抗酸化の要となり、グルタチオンのリサイクルを行うビタミンB3群が非常に重要です。
身体に何らかのストレスが加わるとIDOが活性化して、トリプトファンがキヌレニン経路にほとんど代謝されます。キヌレニン経路では、神経毒となるキヌリン酸、キヌレン酸を生成するために神経系の発達の問題が出てきます。
このキヌレニン経路の代謝にネガティブフィードバックをかけて、セロトニン経路を活性化するためにも、ビタミンB3の摂取が有効です。
5.老化とNMNとビタミンB3
加齢によりミトコンドリアでのATP産生が減少しますが、これは体内のNAD量が減少することと関係しています。この減少するNAD量を補うために、NMNをサプリで摂取する方法がトレンドとなっています。
代謝経路で見るとNMNの原料であるビタミンB3を摂取する方法も、NMNほどではありませんが、NADを増やす効果が期待出来ます。