亜鉛と睡眠

まとめ:亜鉛の摂取によって睡眠が改善しますが、メカニズムは不明です。

2016年に齋藤らは、120人の健常者を対象として、亜鉛の豊富な食品、亜鉛が豊富な酵母、アスタキサンチンの睡眠に対する効果を調べ、亜鉛が豊富な食品を食べると、健康な人の入眠潜時が改善されるだけでなく、睡眠効率も改善されることを報告しました。

サケやオキアミなどに含まれるオレンジ色の成分で抗酸化物質であるアスタキサンチンは、ミネラルをキレート化することができ、亜鉛の吸収を促進します。

2015年にJiらは、幼児(3~5歳)と青年(11~15歳)の血清亜鉛と睡眠との関係を調べました。

青年期の血中亜鉛濃度と睡眠の質との相関性を認めました。一方で、この相関性は幼児の年齢では認めませんでした。

2012年にSongらは、120名の成人女性の血清および毛髪中の亜鉛、銅、亜鉛/銅比と睡眠時間との関係を調べ、血清および毛髪中のZn / Cu比、Znレベル、Cuレベルが、成人女性の睡眠時間に相関していることを示唆しています。

当院のオリゴスキャンのデータでは、亜鉛と銅の相関係数は0.92で、極めて高い正の相関関係を示しています。

2018年にBaradariらは、ICUに勤める54名の看護師を対象に72時間ごとに220 mgの硫酸亜鉛カプセルを1か月間投与された介入群が、有意に睡眠スコアを改善することを報告しました。

2013年にGrandnerらは、栄養素と睡眠時間との関係を調べ、短い睡眠時間と総タンパク質、総炭水化物、ビタミンB1、葉酸、リン、鉄、亜鉛、セレンの不足との相関を報告しました。

2017年にCheraseeらは、睡眠と亜鉛についての総論にて、亜鉛は中枢神経系では亜鉛イオンとしてグリシン作動性ニューロンやグルタミン酸作動性ニューロンに多く存在しており、これらのニューロンの関与を指摘していますが、結論は解明できていないと考察しています。