高脂肪食の発癌リスク

まとめ:バターやココナッツオイルを大量に摂る食事法は、発癌リスクが指摘されています。

1973年にBergは、先進国に移住して赤肉と飽和脂肪酸の多い西洋食を食べると、子孫の結腸直腸癌のリスクが上がることを報告しました。

胆汁酸が分泌された後に小腸での再吸収が出来ずに大腸に到達して、腸内細菌によって代謝されたものが二次胆汁酸です。

高脂肪食は胆汁の排出を刺激するため、胆汁酸の濃度が生理学的レベルを超えて増加します。(2013年、Beherら)つまり、高脂肪食では二次胆汁酸が増えることになります。

大腸内の一次胆汁酸は、嫌気性細菌によるの酵素的脱共役および脱ヒドロキシル化の後に形成されます。これらの二次胆汁酸は、動物実験において発癌リスクが示されています。

その他にも二次胆汁酸は活性酸素、DNA損傷、細胞死など様々な作用機序で発癌させる報告がなされています。(2014年、Ajouzら

1995年にBayerdorfferらは、赤肉と飽和脂肪酸を長期大量摂取すると結腸直腸腺癌のリスクが上がることと、結腸直腸腺癌の患者の血清中の非抱合型二次性胆汁酸が高いことを報告しました。

2019年にZengらは、腸内細菌が作る主要な2つの代謝物である二次胆汁酸と短鎖脂肪酸は、腸の炎症および発癌に対して反対の役割を担っていることを総論でまとめています。

1980年にKromannらは、1800人のエスキモー人とEPA(下記の3つの主要なオメガ3脂肪酸の中のひとつです)摂取が少ないデンマーク人と比較して、心筋梗塞の発症率が低く、脳出血の割合が高い結果であったと報告しています。それ以外にも、エスキモー人はてんかんの頻度が高く、がんの頻度は同程度ですが、真性糖尿病、甲状腺中毒症、気管支喘息、多発性硬化症、乾癬の頻度が低いことも報告しました。

健康で有名なエスキモー人が癌の発症率が欧米人と同等であった理由は、食物繊維の摂取量が少ないからだと考えています。

2020年にTkuhnらは、569例の結腸癌の患者群と対照群を比較して、特定の抱合型一次および二次胆汁酸の血清中のレベルが結腸癌のリスクと正の関連があることを報告しました。

その他に、高脂肪食は銅欠乏となり白血球減少を招くこともあります。

また、動物実験では高脂肪食により不安の増加(2010年、Sullivanら)、攻撃性の亢進(1996年、Hilakivi-Clarkeら)、攻撃性の低下(2014年、Haagensenら)が報告されています。

最近、バターやココナッツオイルを大量に摂取する食事法の相談をよく受けています。私も以前の記事で推奨したり、自分でも実践してみましたが、現在は原則的には推奨していません。

ケトン体を上げる目的で一時的に多めに摂取する方法は良いかも知れませんが、長期大量摂取では発癌リスクが有ることが50年前から指摘されています。

人間がサルだったころは、果物、昆虫、雑草などを主に食べており、その頃から長い年月をかけて遺伝子が進化してきました。人間の身体は、大昔からの食べてきた食物に合った仕様に作られているはずです。

また栄養素は、極端に少なくても極端に多くても問題が起こるのが基本と考えています。

(人によっては、メガビタミン療法などが必要なケースもあると思いますが)

ココナッツオイル系は、奥山先生の本を読んでからは、現在は推奨していません。

最終的にはより自然で長続きする食事療法を勧めています。