オメガ3が怪しくなってきた

まとめ:現在はオメガ3脂肪酸の医薬品およびサプリは推奨しません。

医学でも栄養学でも健康常識でも、オメガ3脂肪酸は健康に良いとされています。
医学と栄養学は犬猿の仲では済まないぐらいの断絶や戦いがありますが、このオメガ3善玉説、オメガ6悪玉説では、珍しく意見が一致しています。

オメガ3の真実を読み返してみて、自分でも調べてみました。

1.うつ病とオメガ3脂肪酸の関係は不明瞭

2006年にAppletonらは、うつ病に対するオメガ3脂肪酸の治療を行った過去12の論文を総括して、効果は限定的であり、研究デザインが不均一なため効果を要約したり評価することは難しいという結論を出しました。うつ病へのオメガ3脂肪酸の効果はほとんど認められなかったと報告しています。

2010年にさらにAppletonらは、うつ病に対するオメガ3脂肪酸の治療を行った17の論文を追加した過去35の論文を総括して、研究デザインが不均一なため効果を要約することは難しいという結論を出しました。またうつ病の人にオメガ3脂肪酸は何らかの効果は存在するが、うつ病でない人にはオメガ3脂肪酸の効果がないとと結論付けました。

2007年にLinらは、10のうつ病に対するオメガ3脂肪酸の論文を総括して、うつ病への有意な効果は示しているが、研究デザインが不均一であるため明確な結論が立証出来ないと結論付けています。

2007年にRossらは、2007年4月までの精神疾患に対するオメガ3脂肪酸の論文を総括して、オメガ3脂肪酸の効果は、統合失調症、境界性人格障害、ADHDに対しては限定的であり、最も効果があったと考えられる疾患は気分障害であると報告しています。しかしながら、結論としては現時点では精神疾患の治療にオメガ3脂肪酸を推奨出来ないとしています。

2015年にAppletonらは、26のプラセボを比較した論文を総括して、うつ病に対するオメガ3脂肪酸を推奨出来ないと結論付けています。

2015年にBhatらは、過去のうつ病とオメガ3脂肪酸に関する論文を総括して、オメガ3脂肪酸の食事以外の要因によるうつ病の患者にとって、オメガ3脂肪酸のサプリメントによるうつ病の治療に期待すること出来ないと結論付けました。

2018年にBeaらは、高齢者のうつ病に対するオメガ3脂肪酸の効果を調べた6つの論文を総括して、軽症から中等度の高齢者のうつ病にのみオメガ3脂肪酸の効果があること、つまり重度の高齢者のうつ病にオメガ3脂肪酸は効果がないことを報告しました。


2017年にDeaconらは、うつ病とオメガ3脂肪酸の治療効果について様々な矛盾があると結論付けました。

2.心血管性疾患とオメガ3脂肪酸の関係も不明瞭

2012年にKotwalらは、20の心血管イベントとオメガ3脂肪酸の治療との関係を調べた論文を総括して、オメガ3脂肪酸が、血管性疾患を予防する可能性はあるが、証拠は明確では無く、以前に考えられていたほどの大きな証拠はないと結論付けています。

2012年にDelgado-Listaらは、21の心血管イベントとオメガ3脂肪酸の治療との関係を調べた論文を総括して、オメガ3脂肪酸は、特に心血管リスクの高い人において、心血管イベント、心臓死、冠状動脈イベントの予防に効果的であるとまとめています。

2013年にKimingらは、アメリカ心臓協会(AHA)は、心血管疾患を予防するために、すべての人が少なくとも週に2回魚を食べることを推奨していますが、近年の否定的な論文から疑問が投げかけられていると指摘しました。初期の4つの大規模試験で有意な結果が出たが、近年の6つの大規模試験で否定的な結果が出て、オメガ3脂肪酸補給による心血管系の転帰に対する保護効果を示さなかったことを総括しています。

2021年にKahnらは、オメガ3脂肪酸の38件のランダム化比較試験のメタアナリシスを実施しました。オメガ3脂肪酸は、心血管系の死亡率を低下させ、心血管系の転帰を改善したと総括しています。

3.糖尿病とオメガ3脂肪酸の関係も不明瞭

2007年にDelarueらは、魚油の補給によって、グルコース代謝クリアランス率が低下する(糖尿病が悪化する)ことを報告しました。

2008年にKaushikらは、質問紙法で魚の摂取量と2型糖尿病との関係を調べたところ、魚を多く摂取すると2型糖尿病のリスクが上がることを指摘しました

2012年にWuらは、オメガ3脂肪酸と2型糖尿病に関する16の論文をまとめて、相関関係はないことを報告しました。

4.癌とオメガ3脂肪酸の関係も不明瞭

2006年にMcLeanらは、癌とオメガ3脂肪酸との関係を報告した38の論文を総括して、オメガ3脂肪酸に癌の予防効果は認められないと結論付けました。

2020年にHansonらは、過去の47の論文を総括して、オメガ3脂肪酸およびα-リノレン酸の摂取は癌とは無関係であるが、総PUFA(オメガ3+オメガ6脂肪酸)の摂取と癌が関係することを報告しました。

オメガ6脂肪酸と癌との関連は、論文の質に問題があり評価が保留とされています。

2019年にFreitasらは、癌関連の合併症におけるオメガ3脂肪酸の有益な効果に関しては、臨床文献の証拠が不足しているため、主にオメガ3サプリメントを使用したランダム化臨床試験などの追加の研究の必要性を指摘しました。また、オメガ3 PUFAが、異形成から癌腫および転移まで、癌の病期に応じて、癌関連の合併症を有意に予防または対処できるかどうかに関する科学的証拠がないと指摘しました。

まとめ:オメガ3脂肪酸を積極的に推奨する理由はないようです。

崎谷先生が指摘するようにオメガ3脂肪酸の酸化リスク、つまり魚の腐った臭いを懸念した方が良いと考えています。