アルツハイマー病とインスリン抵抗性
2型糖尿病があると、アルツハイマー病発症のリスクが2倍となることは広く知られています。
その背景にあるメカニズムは、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性で、インスリン抵抗性から認知症や生活習慣病がドミノ倒しで進行することが知られています。
このインスリン抵抗性が高くなるメカニズムとしては、①インスリンシグナル伝達の障害、②インスリンとアミロイドβタンパク質を両方分解するインスリン分解酵素(IDE、insulin-degrating enzyme)の競合、③過剰なリン酸化されたタウ蛋白の蓄積が神経変性を促進させる、④タウ蛋白によるインスリンシグナル伝達の障害、⑤空腹時インスリンレベルの異常などが考えられており、これらが複雑に組み合わさって、病状が進行していきます。(2018年、Benedictら)
アルツハイマー病では、病理的にベーターアミロイドとタウ蛋白と呼ばれる蛋白質のゴミが脳の中に貯まり、これが神経変性を促進させます。
空腹時のインスリンレベルは2型糖尿病で見られるように高くても、また反対に低くてもアルツハイマー病のリスクが高くなります。(2004年のPeilaら)
インスリンのレベルが低いと、インスリン分解酵素のレベルが低下し、その結果、アミロイドβ沈着が増加します。
低インスリンとなる1型糖尿病においても認知障害は、一般集団よりも1型糖尿病患者に多く見られることが認識されています。(2008年のBiesselsら、1985年のRyanら)
アルツハイマー病では進行するにつれて、インスリン抵抗性が徐々に強くなり、グルコースが利用出来ないために、グルコース以外のケトン体などを利用する生体エネルギーシフトが起こってきます。(2017年、Nethら)
そのために脂肪が燃焼して、アルツハイマー病が進行すると体重が減少することが知られています。(1998年、Whiteら)