アルツハイマー病の腸と炎症

2019年にFuらは、アルツハイマー病とパーキンソン病と胃腸疾患との関係を総括して、どちらも胃腸疾患があるとリスクが上がることから、腸の改善の重要性を指摘しました。

アルツハイマー病はパーキンソン病と比べると、腸や胃腸症状との関係は強くはありません。

アルツハイマー病と炎症との深い関係が指摘されており(2012年のWyss-Corayら2009年のHolmesら2015年のHeppnerら)、腸疾患よりも腸の炎症との関連を反映しているとも考えることが出来ます。

2011年にSaidiらは、単なる加齢に加えて、炎症と自己免疫(つまり腸)の両方がアルツハイマー病に関係していることを総括しました。

2017年にVolgらは、アルツハイマー病患者の腸内フローラを調べて、多様性が低下していることを報告しました。

腸内細菌叢の多様性の低下は、肥満(2009年、Turnbaughら)、2型糖尿病(2010年、Larsenら)、IBD(2008年、Dicksvedら)、パーキンソン病(2015年、Keshavarzianら)などの現代病に共通した特徴であると言われています。

2019年にKowalskiらは、アルツハイマー病における脳-腸-微生物叢軸の障害を考察し、中枢神経系(CNS)および腸管神経系(ENS)を含む、脳-腸-微生物軸に沿った障害は、アルツハイマー病の病因に寄与することを報告しました。腸内細菌叢は、病原菌からのリポ多糖(LPS)と炎症性サイトカインの合成により、局所および全身の炎症をアップレギュレートします。腸内細菌叢の組成の変化は、腸内バリアおよび血液脳関門の透過性の増加を誘発し、腸、全身、およびCNSレベルでの炎症をさらに増強する可能性があります。アミロイドベータ(Aβ)の形成は、ENSとCNSで起こります。さらに、腸内細菌叢から大量のアミロイドが分泌されます。

2016年にHuらは、アルツハイマー病が脳-腸-微生物叢軸の障害によって発病して、古典的な衛生仮説を支持することを考察し、食事療法または有益な微生物叢の介入による腸内細菌叢の調節が、アルツハイマー病の新しい治療法になることを考察しました。