ビタミンB3の大量摂取をする理由

まとめ:体内の抗酸化力はペントースリン酸経路で生成するNADPHが最も重要です。この経路を最大限に有効化するために十分量のビタミンB3が必要です。

グルコース6リン酸脱水素酵素または、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(Glucose-6-phosphate dehydrogenase ,G6PD)は、NADPH濃度を維持することにより細胞へ還元エネルギーを供給するペントースリン酸経路に関与する細胞質酵素です。このNADPHは細胞内の主要な抗酸化成分であるグルタチオンの濃度を維持し、細胞を酸化的ダメージから保護しています。

このNADPHが、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンEを還元型から酸化型に戻すリサイクルを行っています。

G6PD欠損症(グルコース6リン酸脱水素酵素欠損症)

X染色体上にコードされているG6PDの遺伝子の変異で、約140の変異が報告されています。

X染色体上の変異なので、90%は男性であり、女性においてもホモ接合体で発症します。

欠損症と言っても、酵素活性が下がる変異があると言う意味でゼロでは生存出来ません。アミノ酸配列の微妙な違いによって、触媒となる補酵素のNADPの結合が不十分となります。ほとんどのケースでは無症状です。

結合が不十分なので、ビタミンB3を大量に摂取することによって、結合の機会を増やすことが出来ます。(三石理論)

世界で4億人に達すると言われ、ヒトの酵素欠損症としては最多の疾患です。

G6PDは生体内の抗酸化成分の濃度維持に重要です。この酵素活性の低下により、赤血球が酸化障害を受けやすくなります。G6PD欠損赤血球は、ペントースリン酸経路以外の方法でNADPHを生成しないため、他のどの細胞よりも酸化的損傷を受けやすくなっています。酸化ストレスを起こす薬剤(サルファ剤、アスピリンなど)、細菌感染症、ソラマメの摂取などの種々の誘引で、発作性の溶血が生じます。

癌の代替療法である高濃度ビタミンC点滴療法は、G6PD欠損症の検査が必須となっています。ビタミンCは自身が酸化されることで強力な抗酸化作用を発揮しますが、その際に大量の過酸化水素を発生させます。正常な細胞は、この酸化剤として働く過酸化水素を中和できますが、癌や悪性腫瘍はこれを中和出来ず消滅します。この酸化剤として働く過酸化水素の大量発生のために、G6PD欠損症の方は溶血を起こします。

一方で鎌状赤血球症などと同じくマラリア原虫に抵抗性があり、マラリアの蔓延地域では自然選択で有利であるという特徴も持っています。G6PD欠損赤血球は酸化ストレスにより変形が起こり、血液中のマラリア原虫を物理的に駆除します。

G6PD欠損症の世界的な分布は、アフリカ系黒人で最も高く、地中海沿岸の男性の30%に、中国東南部や台湾でも2~15%に認められます。日本人の頻度は約0.1%です。この分布はマラリアの生息地域と一致しています。

これらのG6PD欠損症の発生率が高い国では、戦争関連と非戦争関連の両方で死亡率が有意に高いことが知られています。(2011年にDeWallら)個人の酸化ストレスが、攻撃性を増して、暴力や内戦に繋がると考えられています。

逆に見ると、マラリアの生息地域ほどビタミンB3とグルコースの摂取がより重要となります。

■断糖療法と糖質過食

ペントースリン酸経路は、グルコースを基質として核酸の合成を行うと同時に、NADPHの濃度を維持して、生体内の抗酸化を行います。細胞分裂の盛んな若者は、抗酸化力が強く、老人は抗酸化力が低くなる理由です。

断糖していても、この経路は必須なので、タンパク質から糖新生でATPを消費してグルコースを作っていますので、代謝の面では損をしています。

糖質過食では、この経路に負荷を掛けるため核酸合成を促進させて癌化に繋がります。

適正糖質量の見極めは難しいですが、標準体重の2倍が目安と言われています。

体調面から見ると、筋肉が痩せたり冷え性にならない(糖新生が活発でない)、下腹が出ない(糖質過食でない)糖質量が適正と考えています。