酸化ストレスと還元ストレス
酸化ストレス(Oxidative stress)とは、活性酸素が産生され障害作用を発現する生体作用が、生体システムが活性酸素を直接解毒したり、生じた障害を修復したりする生体作用(抗酸化システム)を上回る状態のことです。
還元ストレス(Reductive stress)とは、この反対で活性酸素による障害作用を抗酸化システムが上回る状態です。
活性酸素は、過剰な産生あるいは酸化ストレスによる老化、がん、生活習慣病発症との関連が注目されがちですが、白血球から産生される活性酸素(スーパーオキシド・過酸化水素など)は、体内の免疫機能や感染防御の重要な役割を担っていますので、無用の長物ではありません。
慢性的な抗酸化物質の補給によって、脂肪細胞のミトコンドリア機能障害に関連する酸化ストレスの逆説的な増加を引き起こす可能性があることが報告されています。(2019年にPerisら)
臨床的には、抗酸化治療のやりすぎで体調を崩す場合があると言うことです。
ヒトの体内の最大の抗酸化システムはペントースリン酸経路で作られるNADPHです。このNADPHが、体内の主要な抗酸化物質であるグルタチオン、ビタミンC、Eのリサイクルを行います。
糖質過食によってグルコースが過剰になりペントースリン酸経路が増強されると、体内の抗酸化システムが過剰になり、還元ストレスが問題になってきます。これを解消して、過剰になったNADPHを減少させるためにポリオール経路が活性化します。(2014年、Yan)
ペントースリン酸経路(抗酸化システム)とポリオール経路(酸化ストレス)が、グルコースの量の多少に関わらず、バランスを取るように設計されています。
断糖などでグルコースが足りない場合は、糖新生で必要最小量のグルコースを引っ張って来ますので、酸化ストレスと還元ストレスのバランスを保つことが出来ます。
一方でロカボを超えて糖質過食になると、グルコースが超過剰になり、ペントースリン酸経路が飽和状態となって、ポリオール経路が増幅して酸化ストレスに傾きます。
ヒトの身体は、現代食の糖質過食に長期間耐えられるように設計されていませんので、肥満、生活習慣病、癌などに傾いていきます。
これが糖尿病で問題となる糖毒のメカニズムです。
年齢とともに酸化ストレスが増えてくる原因は、加齢に伴って核酸代謝を担うペントースリン酸経路が抑制されるからです。
役割が解明されていないポリオール経路の意義は、酸化ストレスと還元ストレスのバランスを取ることと私は考えています。