低体重の糖尿病リスク

まとめ:極端な低体重は痩せホルモンのグルカゴン過剰で起こり、グルカゴン誘発性インスリン抵抗性を招き糖尿病のリスクを上げます。この場合に、動物性タンパク質の過剰摂取をするとさらにグルカゴン分泌が促進され、糖尿病リスクが上がります。

糖尿病は、三大栄養素のブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸が関与する代謝障害です。

インスリン欠乏症(1型糖尿病と膵全摘出)またはインスリン抵抗性(2型糖尿病とグルカゴノーマ)のいずれかが糖尿病を引き起こします。

インスリン抵抗性は相対的・絶対的グルカゴンの過剰によって引き起こされます。2016年、Farchら

さらに、グルカゴン誘発性のインスリン抵抗性は、インスリン欠乏状態の代謝障害を悪化させます。

インスリンとグルカゴンは、主な代謝効果を肝臓で発揮します。

インスリンは肝臓でのグリコーゲンとしてグルコースを蓄積させます。

グルカゴンはインスリン作用の反対で、糖新生とグリコーゲンの分解から、グルコースを放出させます。

糖新生の原料となる糖原性アミノ酸となる動物性タンパク質の摂取はグルカゴン分泌を活性化し、血漿グルカゴンの持続的な上昇を誘発します。(2019年、Mariaら

日本の若い痩せた(BMIが18.5未満)女性(2021年、Satouら)および閉経後の痩せた女性(2018年、Someyaら)に耐糖能障害が多いことが報告されています。

大規模コホート研究にて40歳以上の中高年者では、低体重(BMIが18.5未満)でも高体重(BMIが30以上)でも糖尿病のリスクが上がることが報告されています。(2008年、Sairenchiら

妊娠糖尿病においても低体重が糖尿病の発症リスクになることが報告されています。(2021年、Liら

1型糖尿病は一般的には標準体重ですが、近年はBMIが増加傾向にあります。

1型糖尿病においても高体重は死亡リスク、心血管リスクを増加させます。(2019年、Edqvistら

1型糖尿病における体重増加は、集中的なインスリン治療が原因であることが指摘されています。(2010年、Conwayら

1型糖尿病においても低体重は死亡リスクを増加させ、1型糖尿病のBMIと死亡率の関係は、一般人と同様にU字型になることが報告されています。(2009年、Conwayら

低体重による糖尿病リスクを回避するためには、人類誕生の頃の生活を思い出すことです。

人類の祖先は、堅い果実を主食とした食事でしたが、果実以外にも植物の葉や茎や樹皮も食べていました。果実と言っても現在の果糖に富んだ果実ではなく、食物繊維の多い堅い果実を一日中採集して、噛んでいたと言われています。

グルカゴンを抑制する方法は、食物繊維、糖質、噛むこと、頻回の食事です。

糖質と言っても、精製糖質は問題ありで、複合炭水化物の摂取が基本です。

栄養療法では理想値を目指すのが鉄則で、太っているより痩せている方が健康という訳ではありません。

糖代謝では、インスリン毒糖毒が問題ですが、血糖を上げるグルカゴン過剰は糖毒になります。

糖質制限とは、糖毒とインスリン毒にフォーカスした低インスリンダイエットですが、極端な糖質制限は高グルカゴンとなり、糖尿病リスクや死亡リスクに繋がります。

糖尿病リスクや死亡リスクを下げるには、BMIを中央値に近づける低インスリン、低グルカゴンダイエットになります。