腸内細菌の接合による遺伝情報の伝搬

1946年に米国の分子生物学者ジョシュア・レーダーバーグ博士は、大腸菌が「細菌の接合」によって遺伝情報を共有していることを初めて示しました。

このメカニズムで、抗生物質に対する耐性遺伝子が共有され、細菌の抗生物質耐性が広がると考えられてきました。

このような遺伝子の水平伝播は抗生物質耐性だけに限られないことを明らかにされました。(2021年、Freyら

接合伝達(細菌が接合によって遺伝子の一部をやり取りする現象)が起こり、ビタミンB12を運搬できなかった細菌が、5~9日後にはビタミンB12を運搬する能力を持つ遺伝子を獲得していました。

地球上で進化の頂点に立つヒトの遺伝子は、マウスやショウジョウバエとほとんど同数です。

ヒトの血液中の代謝産物の多くは、ヒトの遺伝子の1000倍の数を持つ腸内細菌が作っています。

腸内細菌は、グルコースなどからあらゆる生体物質を作ることが出来る、さながら錬金術師です。

腸内フローラ移植めざましい治療成績が発表されています。腸内細菌は細胞分裂を繰り返して、次々に新しい細菌が生まれていますが、移植によって自分が持っていない遺伝情報を受け継ぐことが出来る可能性があります。