ビタミンDと神経発達

まとめ:ビタミンD欠乏症は脳の発達に影響を与えます。特に妊婦と子供においてビタミンDの補給が重要です。

適切なビタミンDレベルは、骨の健康に重要であると長い間考えられてきました。過去20年間のデータは、ビタミンD欠乏症が脳の発達と機能にも影響を与えることを明らかにしています。(2021年、Cuiら

ビタミンD欠乏症は、妊娠中または幼児期のいずれかで、自閉症の幅広い表現型の遺伝的素因を持っている個人のASDの環境的トリガーとなる可能性が指摘されています。(2012年、EKočovskáら

小規模な研究で、妊娠中および幼児期のビタミンD補給は、新生児の自閉症の発症率を低下させることが指摘されています。(2016年、Stubbs

不十分量のビタミンDを妊婦や乳幼児に投与して、十分量投与された対照群と比較する大規模研究は、倫理的に実施することが出来ません。

12の実験的研究の総論で、自閉症の子供は、ビタミンD欠乏症が多く、ビタミンD欠乏症が改善すると、自閉症の重症度が低下することが報告されています。理論的には、ビタミンDは、その抗炎症作用、ニューロトロフィンの産生の刺激、発作のリスクの低減、グルタチオンとセロトニンのレベルの調節を通じて、ASDの子供たちの神経発達に影響を与える可能性が総括されています。(2021年、Kittanaら

スイミングプールを利用できる時期に自閉症症状が改善することから子供の自閉症の危険因子としてビタミンD欠乏症があること(2013年、Cannel)、自閉症の発症の危険因子として、日光への曝露の少ない高緯度の地域、冬の出産から、母体のビタミンD欠乏症が自閉症の危険因子であることが(2009年、Grantら)指摘されていますが、これらの結論は保留という総括(2016年、Mazaheryら)も出ています。

ASDの思春期前後の男児は、健常対照群よりも骨塩密度(BMD)が低いことが指摘されています。(2015年、Neumeyerら

ADHDの子供と青年のビタミンDレベルが有意に低いことが、メタアナリシスで指摘されています。(2018年、Kochiら

ADHD症状に対するメチルフェニデートの補助療法としてビタミンDサプリメントに取り組む256人の子供を含む4つのRCTのメタアナリシスにて、有効性を認めたものの、さらなる大規模調査の必要性が指摘されています。(2019年、Ganら

てんかんの大人(2014年、Teagardenら)、子供(2010年、Shellhaasら)も一般的にビタミンD欠乏症が多いことが報告されており、抗てんかん薬の影響が懸念されています。

大人の自閉症および統合失調症の約8割にビタミンD欠乏症があり、健常対照群と比較して多いことが報告されています。(2016年、Endresら

低レベルの母体のビタミンDが統合失調症のリスクを高め(1999年、McGrath)、新生児のビタミンD欠乏症は、後年の統合失調症のリスク増加と関連していることが報告されています。(2018年、Eylesら

乳児期にビタミンDの補給がなかったことが、男性の統合失調症のリスクの増加と関連していたことが報告されています。(2004年、McGrathら

冬と春に生まれる、高緯度に住んでいる、寒い気候に移住する暗い肌(暗い肌が適切なレベルのビタミンDを作るためにより多くの日光への曝露を必要とする)の移民の子孫が、日光への曝露の減少がビタミンD欠乏を招き、統合失調症の発症率を上げることが指摘されています。(2010年のMcFrathら2021年のCuiら

成人の統合失調症の骨粗鬆症について調べた19の研究のメタアナリシスで、有病率は約52%で一般健康群とくらべて、有意に多いことが報告されています。(2014年、Stubbsら

一方で、成人の統合失調症患者へのビタミンDの投与は一定の結論に達していません。(2016年、Chiangら