アルツハイマー病と体重減少
まとめ:アルツハイマー病では、進行と共に自己防衛的にケトン体質に自然に変化して、体重が減少していきます。アルツハイマー病に対するケトン食療法は、初期段階にのみ有効ですが、対症療法的であり根治効果はありません。
肥満(2009年、Luchsingerら)、および2型糖尿病(2014年、Barbagalloら)がアルツハイマー病のリスクなることも指摘されています。
一方で、アルツハイマー病の中期および進行期は、しばしば体重減少と関連していますが、体重減少は認知症状の発症に先行することさえあることが以前より報告されています。(2000年、Gillette-Guyonnetら)
認知症の中でも体重減少がアルツハイマー病に特徴的であることが指摘されています。(1996年、Whiteら)
アルツハイマー病は糖尿病の脳の特異的形態であり、脳のインスリン抵抗性が本態であることが指摘されています。(2014年、Feliceら)
アルツハイマー病では進行するにつれて、インスリン抵抗性が徐々に強くなり、グルコースが利用出来ないために、グルコース以外のケトン体などを利用する生体エネルギーシフトが起こってきます。(2017年、Nethら)
アルツハイマー病の脳のインスリン抵抗性が高くなるメカニズムとしては、①インスリンシグナル伝達の障害、②インスリンとアミロイドβタンパク質を両方分解するインスリン分解酵素(IDE、insulin-degrating enzyme)の競合、③過剰なリン酸化されたタウ蛋白の蓄積が神経変性を促進させる、④タウ蛋白によるインスリンシグナル伝達の障害、⑤空腹時インスリンレベルの異常などが考えられており、これらが複雑に組み合わさって、病状が進行していきます。(2018年、Benedictら)
ケトジェニックダイエットは、特にアルツハイマー病の前駆段階で、認知症状を変える有望な方法である可能性が指摘されています。(2020年のLilamandoら、2019年のRusekら)