新型コロナ感染後の体内代謝経路の考察

新型コロナ感染後の体内代謝経路の変化についての論文が出ています。(2020, Thomas)

新型コロナ感染後の体内代謝経路の変化は、新型コロナ後遺症、ME/CFS、新型コロナワクチン後遺症でも似た病態が起こってくるのではないかと考えています。ある種のミトコンドリア病と言って良い病態です。新型コロナの血栓症もミトコンドリア依存性に起こってきます。

ミトコンドリア病はミトコンドリア脳筋症と呼ばれますが、これはATP要求の大きい脳、心筋、骨格筋を中心に症状が出現するためです。コロナ関連疾患でも、脳、心筋、骨格筋を中心に症状が出現してきます。

■トリプトファン・キヌレニン経路

■グルコース・TCA回路・脂肪酸代謝

■オルニチン回路、メチレーション回路

■新型コロナ感染後の代謝経路の変化

活性化される代謝経路は、キヌレニン経路、ペントースリン酸経路、TCA回路、オルニチン回路、メチレーション回路です。反対に抑制される経路はトリプトファン経路です。感染時の酸化ストレスに対抗して、キヌレニン経路でニコチン酸、ペントースリン酸経路でNADPH、メチレーション回路でタウリン、オルニチン経路でスペルミジンを作ります。

ATP不足を解決するために、全身で異化が起こり、身体の3大栄養素(筋肉、グリコーゲン、中性脂肪)が分解されて、TCA回路になだれ込みます。TCA回路で化学反応を行う材料は増えていますが、ミトコンドリア障害のためにATP産生に問題が生じています。

新型コロナ感染では、糖原性アミノ酸を中心として、TCA回路で消費されるため、ほとんどの血清アミノ酸が減少します。

アミノ酸の排泄も盛んになり、オルニチン回路のアルギニン、クレアチン、クレアチニンは逆に増加します。

■ME/CFSのメタボローム解析との比較(2016, Yamano)(2016, McGregor)(2016, Nauviaux)

トリプトファン・キヌレニン経路の変化は、新型コロナ感染と同様に、ME/CFSにおいても同じ変化が報告がされています。(2022, Kavyani)(2019, Kashi)

ME/CFSでは、80%以上の代謝産物が低下しており全体的には低代謝症候群になっています。TCA回路の多くの中間代謝物が低値になっており、TCA回路も低代謝になっています。(2016, Yamano)(2016, McGregor)(2016, Nauviaux)

新型コロナ感染症ではオルニチンは低下しますが、ME/CFSでは増加しています。(2016, Yamano)

タウリンの低下、スペルミジンの増加はME/CFSのメタボローム解析でも指摘されています。(2017, Germain)

ME/CFS患者のメタボローム解析でも、必須アミノ酸の低下が報告されています。(2016, McGregor)(2016, Nauviaux)

カルニチンについても同様で、ME/CFSのメタボローム解析でサクシニルカルニチンの低下、脂肪酸(パルミチン酸)の増加が指摘されています。(2017, Germain)