POTSに対する薬物療法

まとめ:POTSに対するβブロッカー、グリチルリチンの有効性が報告されています。

POTS(体位性頻脈症候群)は、起立したときに心拍数が大きく上昇し(頻脈)、座ると改善する疾患で、自己免疫疾患、感染症、ワクチン(2022, Park)(2021, Reddy)(2022, Hermer)との関連が指摘されています。

ME/CFSではβ2アドレナリン受容体に対する自己抗体が作用して、β2アドレナリン受容体の機能不全が起こり、ブラジキニンなどの痛覚血管拡張物質が、起立ストレスや骨格筋ストレスに過剰反応して分泌されて、POTSを起こします。(2020, Wirth)

ME/CFSでは、元々交感神経系の過緊張により血管が収縮しています。そこに起立ストレスや骨格筋ストレスに反応して、全身の血管が急に拡張することによって、相対的に循環血漿量が減少した状態になり、POTSを発症ます。

POTSに対する薬物療法のレヴューが報告されています。(2021, Vernino)(2021, Blitshteyn)

βブロッカーは、交感神経系の過緊張を抑制します。

新型コロナウイルス感染後のPOTSに対して、頻脈が優勢である場合は低用量のβブロッカーが推奨されています。(2022, Ormiston)

POTSに対して低用量(20mg)の非選択的βブロッカーのプロプラノロール(propranolol)が、心拍数の制御の改善(1時間後のピーク心拍数の減衰と1回拍出量の増加)が報告されています。(2013, Amold)

POTSに対して低用量(20mg)のプロプラノロールが、頻脈と症状を改善するが、高用量では改善しないことが報告されてます。(2009, Raj)

POTSに対する運動トレーニングの有効性が指摘されています。(2011, Fu)

POTSに対して非選択的βブロッカーのプロプラノロールと選択的β1ブロッカーのビソプロロールの改善効果(起立性不耐症、うつ症状、QOL)は同様であったが、コリンエステラーゼ阻害剤のピリドスチグミンは効果がなかったことが報告されています。(2018, Moon)

心臓の洞結節活動を調節するイオンチャンネルブロッカーであるイバブラジンが、心拍数を低下させ、POTS 患者の症状を緩和することが報告されています。(2018, Gee)

線維筋痛症や顎関節症の症状が低容量のプロプラノロールによって、一時的に改善することが報告されています。(2009, Light)

高用量のプロプラノロールは、脂溶性のために脳血液関門を通過してうつ病を招くことがあることが報告されています。(2006, Steffensmeier)

ME/CFSに対して低用量のプロプラノロールが、疲労、痛み、頭痛、活動量の改善を認めなかったことが報告されています。(2014, Del Allen)

体位性頻脈症候群(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome, POTS)に対してグリチルリチンが有効です。(2013, Perlmuter)

グリチルリチンを含む甘草が入った漢方薬として動悸、POTSに有効なものは、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。医薬品ではグリチロン配合剤として、円形脱毛症、口内炎、慢性肝疾患などに適応を取っています。サプリもあります。