POTS(体位性頻脈症候群)

体位性頻脈症候群(Postural Orthostatic Tachycardia Syndrome, POTS)は、起立したときに心拍数が大きく上昇し(頻脈)、座ると改善する疾患です。(2021, Vernino)(2017, Wells)(POTS and Dysautonomia Japan)

診断としては、立位で諸症状(立ちくらみ、動悸、震え、脱力、目がぼやける、運動不耐、疲労感などの症状)が悪化し、臥位で軽減します。ヘッドアップチルト試験や起立試験で臥位から立位とした時に、10分以内に1分間の心拍数が30以上上昇します。

循環血漿量が減少していることが原因のひとつです。

■自己免疫疾患、感染症、ワクチンとの関連も指摘されています

POTSとOD(起立性機能障害)は起立ストレス(2016, Rowe)と関連しており、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)でよく見られる症状です。(2015, Miwa)

1933人の POTSの患者の解析では、症状発症の平均年齢は 21 ± 12 歳で、中央値は 17 (IQR 13–28) 歳でした。最も一般的な(モーダル)発症年齢は 14 歳でした(図 2)。18 歳以降に POTS 症状の発症を報告した参加者は 2220 人 (47%) でした。1933 人 (41%) の参加者が、特定の出来事から 3 か月以内に症状が始まったと報告しました。これらのうち、最も一般的な引き金は、感染 ( n  = 788; 41%)、手術 ( n  = 237; 12%)、または妊娠 ( n  = 163; 9%) でした。その他には、予防接種 ( n  = 119; 6%)、事故 ( n  = 105; 6%)、思春期 ( n  = 86; 5%)、脳震盪 ( n = = 82; 4%)、または感情的ストレスまたはトラウマ ( n  = 49; 3%)でした。(2019, Shaw)

ME/CFSでは、自律神経の血管拡張に関係するβ2アドレナリン受容体に対する自己抗体を持ち、この機能障害が血管収縮と低酸素の原因となると考察されています。(2020, Wirth)

新型コロナ後遺症後にPOTSはよく見られることからLong covid POTSと呼ばれています。(2021, Raj)

新型コロナワクチン接種後のPOTSも報告されています。(2022, Park)(2021, Reddy)(2022, Hermer)

HPVワクチン接種後にPOTSなどの自律神経症状が出現しており、その患者において自己抗体が存在することが報告されています。(2018, Blitshteyn)

POTSでは、アドレナリン作動性およびコリン作動性受容体抗体の存在が指摘されています。(2017, Ruzieh)