POTSの最新治療まとめ
新型コロナ後遺症、ワクチン後遺症ではPOTS(姿勢性頻脈症候群)が起こってきます。POTSはME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)の中核症状のひとつです。過去の記事(POTSに対する薬物療法、グリチルリチンと甘草、β2アドレナリン受容体自己抗体仮説、ME/CFSの治療のポイント)を総括してまとめていきます。
後遺症の症状は、スパイクタンパク・ACE2依存性の後遺症と、スパイクタンパク・ACE2非依存性の後遺症に分けることも出来ますが、POTSは後者です。
■POTSに対する非薬物療法
ME/CFSによるPOTSは、交感神経の過緊張の状態のところに筋肉へのストレス(立位、動作)が加わって発症します。
交感神経優位から、副交感神経優位にする生活や治療が重要です。
1.高カルシウム、低マグネシウムでは交感神経優位になりやすいので、逆の低カルシウム、高マグネシウムを目指します。
高カルシウムになりやすい乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、カルシウムサプリ、カルシウム製剤は中止します。
入浴剤のエピソムソルトなどで高マグネシウムを目指します。血液検査で血中マグネシウム2.5mg/dLあれば、良好な状態です。
2.腹式呼吸を意識します。睡眠時の口テープを使うことで、腹式呼吸の習慣化を目指します。
3.普段から頭寒足熱の生活を行います。
4.下半身の着圧ウエアもある程度の効果が期待できます。
5.高タンパク、高繊維食で、加工食品などの現代食を制限していくのが基本的な食事療法です。
6.水分摂取、塩分摂取(循環血漿量を増やす)
7.運動習慣
■薬物療法
1.非選択性βブロッカーのプロラノロール(商品名、インデラル)が第一選択です。
ME/CFSでは、体内の血流を調節するβ2アドレナリン受容体の機能不全が起こり、ブラジキニンなどの痛覚血管拡張物質が、起立ストレスや骨格筋ストレスに過剰反応して分泌されて、全身の血管が拡張することで相対的に循環血漿量が減少して、代償的に心悸亢進が起こりPOTSを発症します。
プロラノロールは、心臓にある交感神経のβ1受容体を遮断して、心臓の拍動がおさえられて血圧が下がります。また、β2 受容体を遮断を介して血管拡張が抑制されます。プロプラノロールは、ME/CFSのPOTSに対して二重の効果が期待できます。
ただし、高用量のプロプラノロールは脳内移行してうつ病を招くリスクが指摘されています。(2006, Steffensmeier)
2.グリチルリチンは、ナトリウム依存性に循環血漿量を増やす作用を持ちますので、循環血漿量が減少する脱水などで起こるPOTSに有効ですが、ME/CFSはβ2アドレナリン受容体依存性に起こるPOTSなので、第一選択にはならないと考えます。
3.動悸(交感神経系の興奮)に対して、マイナートランキライザーを使います。
■起立性調節障害に伴うPOTS
1.降圧剤のプロプロノロールは、心臓の拍動(β1)を抑える降圧効果から考えて使用には注意が必要です。
2.グリチルリチンは使用可能です。起立性調節障害によく使われる漢方薬は、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう、茯苓、白朮、桂枝、甘草)です。甘草が多く含まれる一般的に処方される漢方薬は、芍薬甘草湯(芍薬、甘草)、柴胡加竜骨牡蛎湯です。低カリウムには注意が必要です。