β2アドレナリン受容体自己抗体仮説

まとめ:新型コロナ後遺症、ワクチン後遺症、ME/CFSではβ2アドレナリン受容体に対する自己抗体が作用して、体内の血流を調節するβ2アドレナリン受容体の機能不全が起こり、ブラジキニンなどの痛覚血管拡張物質が、起立ストレスや骨格筋ストレスに過剰反応して分泌されて、PEMやPOTSや疲労や痛みを起こします。

ドイツのヴィルト博士とシャイベンボーゲン博士が提唱されています。(2020, Wirth)(ME-gids)

β2アドレナリン受容体は、脳、骨格筋、心臓の血管に見られます。これは交感神経系の下流メディエーターであり、特に血流を調節します。

血管内の β2アドレナリン受容体は、筋肉に到達する血流を最大 20 倍の増加に対応するために、運動中に血管を開いたり広げたりするのに重要な役割を果たします。これを行うために、血管はアデノシン、ATP、プロスタグランジン (PGE)、プロスタサイクリン (PCI)、ブラジキニン (BK)、プロトンなど、さまざまな血管拡張剤を放出します。

<β2アドレナリン受容体自己抗体仮説>

第一に交感神経系の過活動による血管収縮があります。そこに加えて自己抗体によってβ2アドレナリン受容体の機能不全があります。起立や運動などで筋肉の血流の要求に対して、β2アドレナリン受容体から血管拡張剤として痛覚血管拡張剤のブラジキニンが過剰に分泌されます。そのブラジキニンが、血管外、リンパ液、組織の間の空間に漏れ出し(スピルオーバー)、痛み、疲労を起こすと同時に、血流量の減少を招き、交感神経系の過活動を招く悪循環を起こします。

ブラジキニンは血管拡張と同時に血流量を維持するレニン-アンギオテンシン-アルドステロンシステム(RAAS)を阻害します。

新型コロナ後遺症では、高血圧を引き起こすことが多いことが報告されています。(2022, Akpek)

ME/CFSの血清でβ2アドレナリン受容体およびムスカリン性コリン作動性受容体に対する自己抗体が上昇していることが報告されています。(2016, Loebel)

β2アドレナリン受容体抗体は、様々な自己免疫疾患、神経疾患、心血管疾患で上昇することが報告されています。(2014, Waklkat)

β2 アドレナリン受容体抗体が、姿勢性性頻脈症候群(Postural Tachycardia Syndrome: POTS) に関係することが報告されています。 (2014,  Li)

IgGアフェレーシスによるこれらの自己抗体の除去は、ほとんどの患者で急速な改善をもたらし、ME/CFS における自己抗体の病態生理学的役割を示しています。(2018, Scheibenbogen)

β2アドレナリン受容体抗体 遺伝子の多型 (Gln27 変異) が 思春期のME/CFSに関連して報告されています。(2011, Sommerfeldt)

新型コロナ後遺症で、Gタンパク質共役受容体に対する自己抗体が報告されています。特に対象患者31人全員に認められたものはβ 2アドレナリン受容体とムスカリン M 2受容体を標的とした自己抗体でした。(2021, Wallukat)

HPVワクチン接種後に後遺症症状が出現した患者では、β 2アドレナリン受容体などの自律神経受容体に対する自己抗体が有意に上昇していることが報告されています。(2019, Hineno)

in vitroでポリクローナルIgGがβ2 アドレナリン受容体を生理学的に刺激することが出来るが、この活性化がME / CFS患者で弱まっていることから、ME/CFS患者ではβ2 アドレナリン受容体の機能不全があると考察されています。(2020, Hartwig)

新型コロナ後遺症では、循環障害と低酸素血症に対して、過換気となる呼吸困難(2021, Tabeme)(2021, Motiejunaite)を起こします。この際の治療として、過呼吸を改善するための腹式呼吸、酸素療法が提唱されています。(2022, Wirth)

β2-アドレナリン受容体刺激は、インビトロおよびインビボでCD4 陽性T細胞およびBリンパ球機能を調節すること(2001, Kohm)から、新型コロナ後遺症関連で、免疫抑制を起こすことが推測されます。