こむら返りに漢方が効く理由
まとめ:芍薬甘草湯に含まれるグリチルリチンは、水分とナトリウムの貯留作用を持ちます。この作用がこむら返りに有効です。
こむら返りは、特に運動に関連して起こるものはEAMC(exercise-associated muscle cramps)と呼ばれます。
芍薬甘草湯は、こむら返りに有効であることが報告されています。(2020, Ota)(2003, Hinoshita)
甘草を含む漢方薬は沢山ありますが、芍薬甘草湯は甘草の含有量が極端に多くなっています。
この甘草が含んでいるグリチルリチンは、アルドステロン様の作用を持ちます。アルドステロンは腎臓でのナトリウムと水分の再吸収を促す作用を持ち、陰虚を改善する効果があります。ただし長期服用すると、高血圧、血清カリウムの低下、下肢の浮腫を招く場合があります。陰虚を悪化させる利尿作用のある薬物は、こむら返りを悪化させる可能性があります。
芍薬甘草湯の芍薬に含まれる「ペオニフロリン」という成分は、筋肉が収縮するために必要なカルシウムの細胞内流入を減らし、結果として筋肉の収縮を押さえると考えられています。また、抗炎症作用あるいは血小板凝集を抑制することにより血流促進作用を持つと考えられています。 また甘草に含まれる「グリチルリチン」は、カリウムイオンの週出を増やすことで、最終的に神経筋シナプスのアセチルコリン受容体に作用し、筋弛緩の働きをもつとされています。
こむら返り(EAMC)の原因は完全には解明されていません。脱水と電解質の喪失理論や神経筋制御理論(疲労や筋肉損傷など)がありますが、相反する様々なデータが出ています。(2015, Miller)
骨格筋のけいれんのためのマグネシウムの補給の有効性は証明されていません。(2020, Garrison)