新型コロナワクチンによる横紋筋融解症
まとめ:新型コロナワクチンによる横紋筋融解症のメカニズムとしては、ACE2受容体が高密度の心臓でミトコンドリア依存性のアポトーシスが起こると考えられます。
横紋筋融解症(rhabdomyolysis)は、骨格筋を構成する横紋筋細胞が融解し筋細胞内の成分が血中に流出する病態です。筋肉への酸素運搬体であるミオグロビンが大量に血中に溢れ出し、重症の場合には腎機能の低下を生じて急性腎障害(AKI)になり、腎不全により誘発される臓器機能不全を発症し、死亡する場合もあります。(2000, Vanholder)
横紋筋融解症でみられる症状の古典的三徴は、筋肉痛、筋力低下、赤褐色尿である。しかし、横紋筋融解症の全患者のうち、この三徴が全てみられる患者の割合は10%を下回ります。検査ではクレアチンキナーゼの上昇がポイントで、正常の5倍以上になります。原因としては、スタチンなどによる薬剤性、ウイルス感染症が報告されています。
重度のME/CFSでは、クレアチンキナーゼが有意に低値を示すことが報告されています。(2019, Nacul)
スタチン療法による横紋筋融解症の主なメカニズムは、HMG-CoA 経路によって生成されるミトコンドリアの呼吸鎖の構成要素であるユビキノン (コエンザイム Q)の減少により、筋肉細胞死であると考えられています。(2021, Safitri)
新型コロナワクチン接種後の横紋筋融解症の論文での症例報告は約30例(2023, Fukushima)ですが、アメリカのワクチン有害事象の報告システム(OpenVAERS)によると現時点(2023年3月3日)で約750件に及んでいます。
入院中の新型コロナ感染症患者413人における急性心筋損傷と横紋筋融解症の発生率は、それぞれ 23.9% (99人) と 15.7% (65人) でした。急性心筋損傷と横紋筋融解症は、新型コロナ感染症患者では過小報告されていると考察されています。横紋筋融解症の患者は、クレアチンキナーゼレベルが 1,000 U/L を超える場合と定義され、急性心筋障害は、血清高感度トロポニン-T が男性で 30 ng/l を超え、女性で 20 ng/l を超える場合と定義して解析されました。(2021, Ali)
骨格筋の関与は、筋肉痛、筋無力症 (軽度から重度)、急速な疲労、運動不耐性、および筋萎縮を伴います。全身性炎症を反映する筋肉痛は、新型コロナ感染症の初期症状である可能性があります。筋肉痛は、疾患の重症度に応じて、新型コロナ感染症患者の 11% から 50% で報告されました。疾患の急性期にある 8697 人の患者のコホート研究では、21.9% の症例で筋肉痛が報告された。筋肉痛は、病気の急性期の後も長期間続くことがあります。1655 人の患者の検査では、病気の後、患者の 2.0% で筋痛が持続し、患者の 63% で筋無力症と急速な疲労が認められ、患者の 7% で歩行の問題が報告されたことが明らかになった。(2022, Eskin)
新型コロナ感染症で見られる筋肉痛は、横紋筋融解症の可能性を考慮すべきであることが指摘されています。(2023, Rezaie)(2022, Bawor)
新型コロナワクチン接種後の横紋筋融解症では、通常は骨格筋で起こるものが心臓でも起こっています。(2023, Fukushima)
心筋には、新型コロナウイルスが細胞に侵入するためのACE2受容体が高密度に存在します。(2022, Hoffmann)