エストロゲンの問題
1.骨粗鬆症
女性は閉経後に、エストロゲンの減少に伴って骨粗鬆症を起こしやすくなります。
エストロゲンは破骨細胞を抑制します。破骨細胞は「古くて脆い骨をきれいにすること」が役割なので、破骨細胞を抑制することによって、逆に骨の質の低下を招きます。
エストロゲンを抑制する偽閉経療法では、骨粗鬆症の副作用が出るリスクがあります。
骨粗鬆症の栄養療法としては、高タンパク食、ビタミンD、乳製品を控える、マグネシウムの摂取などがあります。
2.血栓症
エストロゲンが肝臓において血液凝固因子合成を促進させる作用を持っています。
エストロゲンを投与する偽妊娠療法で使うピルは、血栓症を起こしやすくなります。血栓症のリスクのある肥満、喫煙者、40歳以上、高血圧などの方は注意が必要です。
新型コロナウイルス感染症は、全身性の炎症によって凝固能が亢進して、血栓症を生じることが知られています。低用量ピルを含むエストロゲン製剤を服用していると、血栓症の発症リスクがに上昇します。以上から新型コロナウイルスに感染した場合は、エストロゲンの補充療法は一旦中止します。
3.発癌
乳がんのがん細胞の60~70%は、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて、分裂・増殖します。つまり、エストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体と結びつき、がん細胞の増殖を促します。
4.大豆
大豆は植物性エストロゲン作用があることが知られています。2006年に厚生労働省が大豆と大豆イソフラボンに関する考え方を公表しましたが、大豆や大豆食品ではなく通常の食生活に上乗せして摂取した場合についてです。食品安全委員会がサプリメントや添加物としてのイソフラボンの過剰な摂取に注意を呼びかけました。
現在の結論としては、食品安全委員会は「現在までに入手可能なヒト試験に基づく知見では、大豆イソフラボンの摂取が女性における乳がん発症の増加に直接関連しているとの報告はない」と報告しています。