学習性無力感

学習性無力感(learned helplessness)とは、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象です。

「何をやっても無駄だ」という認知を形成した場合に、学習に基づく無力感が生じ、それはうつ病に類似した症状を呈します。1967年にマーティン・セリグマンらのオペラント条件付けによる動物実験での観察に基づいて提唱され、1980年代にはうつ病の無力感モデルを形成しました。

犬の行動障害では、攻撃性、分離不安、恐怖症が一般的ですが(2007年、Yalcinら)、この恐怖症が学習性無力感のことです。

この学習性無力感は、虐待やPTSDにも密接に関係していることが知られています。(2007年、Neta Bargaiら

学習性無力感の提唱者のセリグマンは、ポジティブ心理学の有効性を提唱しています。

2019年にYangらは、漢方薬のクルクリゴシド(Curculigoorchioides、センボウ)が、学習性無力感のモデルマウスに対して有効であることを報告しました。

2017年に白山らは、学習性無力症のモデルラットに対して、麻酔薬のケタミンの有効性を指摘しました。

ケタミンは日本では注射薬の麻酔薬として使われていますが、2019年にアメリカ、2020年にイギリスでは医薬品として難治性のうつ病の治療に承認されています。

近年うつ病の新薬の開発は止まっている中で、うつ病の治療のパラダイムシフトとして注目されています。(2019年、Krystalら