経口グルタチオンは有効か?
まとめ:投与されたグルタチオンは経口では腸で、点滴投与では腎臓で速やかに分解されますが、グルタチオンの合成のための材料を提供して、肝臓や皮膚や全身でのグルタチオンの合成を促進させます。
グルタチオンの経口投与は血漿レベルの上昇に有用であるように思われますが、経口投与されたグルタチオンは、腸内酵素であるγ-グルタミルトランスペプチダーゼが外因性グルタチオンを吸収する前に分解するため、ヒトへの経口補給は議論の余地があります。
血液中のグルタチオンは腎臓でγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GTP)によって速やかに分解されて(半減期2分)3つのアミノ酸になり、それが再吸収されて肝臓で再合成されます。これがグルタチオンの肝腎サイクルです。(1986, Inoue)
肝細胞で合成されたグルタチオンは胆汁へ分泌されて、解毒抱合などを担います。消化管に出たグルタチオンや経口投与されたグルタチオンは、腸内酵素のγ-GTPで分解されて3つのアミノ酸になり、再吸収されて再び肝臓に戻って、肝細胞でグルタチオンに再合成されます。これがグルタチオンの腸肝サイクルです。(1983, Inoue)
経口グルタチオンの補給によって酸化ストレスのバイオマーカーに有意な変化は観察されなかったことが報告されています。(2011, Allen)
グルタチオンは経口投与より舌下投与が優れていることが報告されています。(2011, Schmitt)
細胞内のグルタチオンレベルは、メチレーション回路によって厳密に管理されているために、簡単にはアップレギュレートされないことが報告されています。(1986, Meister)
細胞内のグルタチオンは主にその生化学的前駆体によって細胞内で合成されるため、グルタチオンそのものの投与は細胞のグルタチオン濃度の有意な増加をもたらさない可能性が指摘されています。(2003, Hight)
システイン前駆体である N-アセチルシステイン (NAC) は、グルタチオンの産生を促進することが知られています。(2011, Schmitt)
システインはグルタチオン合成における制限アミノ酸であるため、システインの投与は細胞のグルタチオンレベルを上昇させます。(1998, Anderson)
食事由来のグリシンが、グルタチオン合成における制限アミノ酸であるという報告がなされています。(2018, McCarty))
非必須アミノ酸であるセリンが、①潜在的にシステインの利用可能性の増加、②過剰メチル化の減少、③グルタチオン合成に使用される前駆体アミノ酸の1つであるグリシンへの代謝を通じて、グルタチオン産生にプラスの影響を与えるのに役立つ可能性があることが報告されています。(2017, Zhou)
血液中のグルタチオンのほとんどは肝臓由来で、合成されたグルタチオンは血液中と胆汁中に分泌されます。(2013, Lu)
血液中のホモシステインとグルタチオンのレベルが逆相関することが報告されています。(2009, Salemi)(2003, Muda)