新型コロナとパーキンソンニズム
まとめ:新型コロナ感染および新型コロナワクチン接種後にまれにパーキンソンニズムが発症します。スパイクタンパク質がACE2を介して、ドーパミン系を障害することなどが想定されています。
新型コロナワクチン接種後に、パーキンソン病の運動障害が発症した2症例が報告されています。(2022, Imbalsano)
新型コロナワクチン接種後の副作用としてのパーキンソンニズムなどの運動障害は、ほとんどが振戦を伴います。また、頻度としては多くないことが報告されています。(2022, Schneider)
2022年11月までの報告のレビューにて、新型コロナ感染症後のパーキンソンニズムの症例報告は、24名で感染後に平均30日で発症して、ドーパミン作動薬への反応性は15人中12人で観察されました。9名の患者ではフォローアップ期間中に症状が改善しました。新型コロナワクチン接種後のパーキンソンニズムの報告は5名で、接種後に平均25時間でジスキネジアを発症しました。4名はパーキンソン病の既往歴があり、5名中4名はフォローアップ期間中に改善しました。(2023, Dulski)
新型コロナウイルスの入り口であるACE2レセプターは、中枢神経系では特に脳幹部、大脳皮質、視床下部、黒質、大脳基底核のグリアと神経細胞に発現しており、ドーパミン作動性ニューロンにおいて、ACE2レセプターは高密度に発現していることから、ドーパミン系が障害を受けやすいことが指摘されています。(2022, Cavallieri)
ドーパミンとセロトニンの合成に重要な役割を果たすDOPAデカルボキシラーゼという酵素が、ACE-2の発現と機能的に連動していることから、新型コロナウイルスによってドパミン合成経路の破壊によってパーキンソンニズムが発症する可能性が指摘されています。(2020, Nataf)
in vitroの実験で、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質 (S タンパク質) は α-シヌクレインの凝集に影響を与えませんが、SARS-CoV-2 ヌクレオキャプシドタンパク質 (N タンパク質) は凝集プロセスを大幅にスピードアップすることから、新型コロナウイルス感染がパーキンソンニズムの神経変性を悪化させる可能性が指摘されています。(2022, Semerdzhiev)
新型コロナウイルス感染が、パーキンソン病およびアルツハイマー病の症状の悪化および神経変性の悪化を促進することが総括されています。(2023, Huang)