腸内フローラと食事
食事によって、腸内フローラが短期間で大きく変化することが報告されています。
食事療法は、人間の腸内細菌叢を迅速かつ再現性よく変化させ、完全に動物または植物製品で構成される食事の短期間(5日間)の消費が微生物群集構造を変化させ、微生物遺伝子発現の個人差を圧倒することを報告しました。
全粒穀物、野菜、果物などの植物性食品の摂取と、肉や魚や乳製品などの動物性食品を摂取した場合の腸内フローラの結果を調べた結果が多数報告されています。
食事内容を変えると、24時間という短い期間で劇的に腸内細菌叢は変化して、さらに食事制限を解除するとわずか48時間で、劇的に元に戻ると報告されています。
タンザニアの狩猟採集民族のハッツァ族は、雨季と乾季で全く違う食べものを摂っていますが、腸内細菌叢が大きく変化することが知られています。
ヒマラヤに住む四つの民族集団の腸内細菌叢を分析したところ、食の欧米化が進んだ地域ほどアメリカ人の腸内細菌叢と類似してたという報告もあります。
ヨーグルトなどのプロバイオティクスと同じで、腸内フローラを変えるためには、食事療法を継続する必要があるということです。
ちなみにこの植物性食品を豊富に摂る食事が、地中海食や日本食などの長寿食と言われる食事になります。
反対に西洋食(動物性タンパク質が多く、食物繊維が少ない)が、最も腸内フローラの多様性を減らし、炎症性腸疾患をはじめとする多くの疾患のリスクになることが指摘されています。
高脂肪食については、同様にTMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)を代謝物として産生して心血管系疾患のリスクを上げます。
また高脂肪食では、Firmicutes属やClostridium属が産生する二次性胆汁酸が増えて、腸肝循環による肝がん発病に寄与すると言われています。
最終的に栄養素の中で、最も腸内フローラに影響を及ぼすのは炭水化物であり、特に水溶性食物繊維とオリゴ糖です。
少し視野を広げてみると、腸内フローラに最も悪影響を及ぼすのは、精製糖質の過剰摂取です。
精製糖質を過剰に摂取するということは、食物繊維を除去するという意味だからです。
さらに、大腸に到達した精製糖質が、食物繊維より優先的に腸内細菌に利用されてしまいます。