グルカゴノーマ
「吐き気がして、食べられなくなる」状態は、ケトジェニックダイエット、悪阻、子供の自家中毒症でも認められます。体調不良で数日間ほぼ食べられない状態が続いても、この状態になります。
血液中のケトン体が増えてケトン体質になっています。
グルカゴン産生腫瘍のグルカゴノーマの場合も、同じ状態になります。
グルカゴノーマでは、グルカゴン過剰となるため、I型糖尿病と同じ状態になり、体重減少、貧血、低アミノ酸血症、低脂血症、高度の栄養障害になります。
その他に脱毛、爪甲の変化、舌の発赤・萎縮が見られる場合があります。(1983, 坂田)
特徴的な所見は、壊死性遊走性紅斑です。
壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマ症候群の70%にみられる所見です。
典型例では、はじめ紅斑性丘疹や紅斑の形で,会陰部や鼠径部に生じ,それが四肢に遊走していく。次第に大きくなって融合し,中央に青銅色の硬結が生じ,周囲には痂皮・落屑が形成され,痛みやかゆみが生じる。粘膜にこのような病変が遊走すると舌炎,口角炎,口内炎,眼瞼炎などになります。
グルカゴン過剰による低蛋白血症により皮膚の再生が不十分になっていることに加えて、皮膚の材料である亜鉛欠乏が関与しています。
グルカゴノーマに関連する脱毛症および壊死性遊走性紅斑において、亜鉛欠乏が関係していることが報告されています。(2016, Ogawa)
診断は、血清グルカゴン値および画像診断で、治療は手術での摘出が第一選択です。
多発性内分泌腫瘍症(MEN)は複数の内分泌臓器および非内分泌臓器に 異時性に良性、悪性の腫瘍が多発する症候群で、MEN1とMEN2の2疾患を含みます。MEN1では副甲状腺機能亢進症、下垂体腺腫、膵消化管内分泌腫瘍が三大病変であり、他に副腎や皮膚、胸腺などにも腫瘍が発生する。MEN2は甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症が三大病変で、MEN2Bとよ ばれる亜型では眼瞼や口唇、舌に粘膜神経腫を合併する。
このMEN1として、グルカゴノーマを発病することもあります。