自閉症への糞便移植治療〜背景となる論文
■自閉症症状を一時的ではあるが改善する効果があるという論文。
2000年にSandlerらの報告があります。
児童へ抗生物質投与後に、慢性下痢が続き、自閉症症状が目立ってくることがあることが知られています。
この典型例の自閉症児11名にバンコマイシンを投与したところ、顕著な自閉症症状の改善が一時的に見られましたが、その後は元の状態に戻ってしまったという報告です。
抗生物質投与により土着の腸内細菌叢の破壊されて、1つ以上の神経毒産生細菌による定着を促進し、自閉症の症状に寄与すると推測されてます。
★抗生物質による腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)がバンコマイシンによって、一時的に改善したが、バンコマイシンを中止すると元に戻ってしまったと言う内容。
2014年にSinghらは、ブロッコリー由来の植物性化学物質のスルフォラファンを29名の若いASD男性に18週間投与したところ、顕著な臨床症状の改善が見られたが、投与中止後は、治療前のレベルに向かって増悪したという報告です。
スルフォラファンは、ブロッコリーに含まれるフィトケミカルの一種で、体内の解毒酵素や抗酸化酵素の生成を促進し、体の抗酸化力や解毒力を高めます。サプリでも販売されています。
細胞ストレス応答の活性化は、環境毒素から細胞を保護することが知られています。スルフォラファンの環境解毒剤としての作用が、ASDの脳に影響を与えたと推測されています。
★スルファラファンによる解毒作用、抗酸化作用によって、腸内フローラのディスバイオーシスが改善したが、スルフォラファンを中止すると元に戻ってしまったと言う内容。
■自閉症と帝王切開や抗生物質との関連についての論文。
2019年にAxelsonらは、15年間にわたり671,606 人の子供を追跡調査したところ、72%が抗生物質を投与され、17.5%が帝王切開で出産し、1.2%が自閉症を発症していた。
抗生物質投与と帝王切開の両方で、自閉症の発病リスクが増加したことを報告しています。
出産に際して、経膣分娩では、母胎から経膣的な方法と、出産時に母親が脱糞した糞便を傾口的に赤子が摂取することによって、無菌状態の赤子が母親の腸内細菌叢を受け継ぐことが知られています。
2014年にCurranらは、13の過去の論文を総括して、帝王切開による分娩はASDの発病リスクを上げることと、ADD/ADHDの発病リスクを少し上げることを報告しました。
★帝王切開も抗生物質も腸内フローラのディスバイオーシスを起こし、自閉症の原因のひとつとなると言う内容。